東日本大震災の現場 (7) 石巻市動物救護センターでのボランティア(続き)
さて、動物救護ボランティアを実際にやってみると、「男の人は力が強い」という偏見(?)によって、俺は大型犬の散歩を頼まれた。ここまで来て「大型犬は怖いです」とも言えず、引き受けざるを得なかったが、最初はおっかなびっくりだった。象のような多量の糞をビニール袋で手づかみしていると、「なんで俺はこんなことをやろうとしてしまったんだろう」と、少し後悔した。
ところが、大型犬(とくにボーダーコリー)は賢い。うちのビーグル犬ヴィーノとはまったく違う「忠犬」ぶりに、だんだん恐怖心がなくなっていき、「かわいい」と思えるほどまでになった。まぁ大型犬に慣れたことは、今回のボランティアで得したことでもある。
福島県の原発周辺で保護された犬たちは、一晩目は、興奮して騒いだり、下痢をしたり、吐いたり、犬たちはたいへんだった。とくに、放浪していて浪江町で保護されたビーグル犬(上の写真)は、ケージの金属を噛みちぎろうとして騒ぎ、ケージをひとつ壊した。
やっぱりビーグルは活発だ。うちのヴィーノだけではないことを知って少し安心し、そして苦笑した。
犬たちも、突然知らないところへやってきて、恐怖と不安で精神的に不安定だったのだろう。
もしかしたら、放浪していたほうが幸せだったのでは? 連れてくることが本当に「いいこと」なのか?と言う人もいる。
でも、そんなこと誰もわからない。人間がいないと生きていけないペットが、うろうろしている状況を見て、何とかしたいと思う人の気持ち、それは目の前でおぼれかけた人を助けてしまう衝動と似ている。
こんな非常時に正解を求めてからやり始めても何も進まない。頭で考えてもしかたない。多少の失敗はあるだろう。それなら次に活かせばいい。そんな試行錯誤の活動しかないのだ、非常時は。
仕事は、犬の散歩のほか、ペットフードの仕分け、積み上げ、仮設テントの設置、解体など体力がいる仕事もあった。とくに大嵐の中でテントの解体をし、物資を雨風から守る仕事は正直つらかった。下着の中まで雨が浸透し、寒くてしかたなかった。
2日目、3日目になるとだいぶ犬たちも落ち着いてきた。
そこで、たまたまデジカメを持っていた俺(写真家とは言っていなかった)は、別な仕事もすることになった。飼い主を探すHPにアップするため、保護した犬の写真を撮ることになったのだ。これなら俺にでもできる。いや写真家ならではのボランティア活動だろう。(だからギャラは発生しないが)
その写真は、こちら。
妻からは「被災犬に見えない」と酷評(?)された写真だ。
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