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2012/04/23

東日本大震災の現場 (25) 福島県南相馬市の悲しい桜の風景

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福島県南相馬市の道の駅の隣には桜の木が10本ほどあった。8分咲きくらいでそろそろ満開を迎える。でも、木の周りが、庭園のように白いので、なんとなく不思議で不自然な風景だ。

おばさんがやってきて「きれいでしょう?」と声をかけられた。

白いのは、除染のあとだという。以前は芝生が敷き詰めてあった。除染するため、芝生を全部はがして、中央に穴を掘り、埋めたという。

どうりで、真ん中にこんもりと小山がでいていた。(写真、真ん中。わかりづらいかもしれないが、中央に高さ1mほどの小山が見える) それが除染で出た芝生と土を埋めた場所。それを聞くと、この不自然さの正体がわかり、悲しい風景に思えてきた。

芝を育てているので、ロープを張って立ち入り禁止にしている。歩けるのは遊歩道部分だけだ。だから桜の下に行くことはできない。

おばさんは原発の爆発直後千葉県の親族宅に非難したが、4月20日には戻ってきた。

「そのとき桜があっても、桜は見えていたんだろうけど、桜に見えなかったですね。それだけ余裕がなかったということでしょうか。今年はそれと比べると余裕が出たんでしょうね。桜が美しいと思って見てますよ。今日も野馬追いの会場のグランドにも行ってきました。新田川に沿った桜並木もあるけど、あっちはなかなかいけない。すっかり瓦礫もなくなってきれいなんでしょうけど。去年、馬の死体があがっているのを見たから」

「地元の人どおしで会うと、原発の文句ばかり。原発を再稼動しようとしているところあるけど、やめたほうが絶対いい。目に見えない危険がどんなに生活を壊してしまうか。でも、わかんないんでしょうね。自分で体験しないと」

「首都圏に大地震がくるといって騒いでいるようですが、体験すればわかりますよ。でも、来るなら3年後以降にきてほしいですね。もし今きたら、首都圏のほうを復興しようとなって、ますますここは忘れ去られてしまうでしょうから」

けっこう過激な発言だ。でも、東電はもちろんのこと、首都圏の人(あるいは東北以外の人)に対するいらだちのようなもの、いや、怒りを感じる。

「今の現状を知ってほしいんですよ。ぜひ、この話を書いてください。相馬の人間の生の声として」

おばさんは誰かに話しかけたくてしかたなかったようだ。たぶん、ここに住む人の多くが「現状を知ってほしい」と思っているのは間違いない。忘れられる恐怖、何も進まないいらだち。

桜の後ろに見えた長屋風の平屋の建物は仮設住宅だった。津波で流された原町地区の人や、警戒区域に指定された小高地区の人たち。

4月16日、小高地区は警戒区域解除になり自由に出入りができるようになったが、まだ宿泊は認められていない。

おばさんから桜の名所だと聞いて、市役所の南にある、相馬野馬追いの会場へもいってみた。ちょうど満開だ。でも、ここでも一部除染作業中のところは立ち入り禁止だった。(写真、一番上)

夜、道の駅の桜はライトアップされた。ほとんど見にくる人はいない。ライトアップされているのに、こんな静かな夜桜は初めてだ。


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まだ南相馬ですか?

投稿: すててこどんどん | 2012/04/24 00:04

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