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2014/07/20

「芸術療法」の中の「写真療法」と「棚田や原風景のイメージ」

140720

箱庭療法というものを知ったのは、ユング心理学の河合隼雄氏の本を読んだときでした。

砂の入った箱の中に、人や動物や木などのミニチュアを置いていき、箱庭を完成させるという心理療法のひとつです。

これを見たときハッとしたのです。そして思い浮かんだ言葉は「棚田」や「原風景」というものでした。

そのときは漠然とですが、棚田の写真を撮る(というより棚田のある現場に立つ)行為が、この箱庭療法と似ているのではないかというものでした。とくに棚田のある集落を俯瞰したときの感覚が、箱庭を眺めているような感覚なのです。

その後いろいろ調べてみると、箱庭療法は、大きな意味で芸術療法(アートセラピー)に入り(独立した療法だという説もあり)、この芸術療法の中には、写真療法というのもちゃんと入っていたのです。芸術療法は、日本では1960年代から研究実践されていて、イギリスでは保険サービスとして認められている公式な療法だそうです。怪しいものではありません。

俺は「写真家になりたくてなったのではない」とさんざん言ってきました。俺にとって写真は、職業ではないという自覚が最初からあったからですが、この芸術療法という点から見れば、まさに、俺にとっての写真を撮る行為は、写真療法そのものになっていたんだなぁということが分かります。「療法」というと病気を治すイメージですが、「表現」にはそもそもそういう治療的側面が伴ってしまうので、ここではあまり病気か病気でないかを区別する必要なないような気もします。

そして写真を撮る行為だけではなく、その被写体である棚田や原風景というものも、もしかしたら、この芸術療法と関係があるのではという直感があります。

心に関して、ユングの考え方では、「意識」→「個人的無意識」→「普遍的無意識」というふうに階層を作っています。この一番深いところの「普遍的無意識」というのは、人類が共通して持っている無意識で、あるイメージとなって現れるといいます。

掲載したバッティック(ろうけつ染め布)は、昔、マレーシアのコタバルに滞在していたとき描いたものです。これは俺の心に浮かんだ曼荼羅ですが、曼荼羅も「元型」のひとつだそうです。この場合は、写真ではないので「絵画療法」といっていいんでしょうか。(ただ、だからといってこの曼荼羅から俺の精神状態を分析できるのかはわかりませんが)

それと俺にとっては、作曲や旅も「療法」と考えることもできます。ただし、すべて「療法」と捉えてしまうのもどうかと思いますが。

「普遍的無意識」には、いろんな「元型」があるわけですが、もしかしたら、「棚田」や「原風景」といわれるものも、この「元型」のひとつなのではないかということも、ひとつの考え方としてはありでしょう。

なぜそう思うようになったかというと、20代の青年と話をしたとき、彼は都会生まれで「田舎」というものもないし、近くに棚田があるわけでもないのに、「なぜか棚田にひかれる」と言ったのです。

俺は子供のころ「棚田」とは意識していませんでしたが、さんざん田んぼは見て育ったので、俺が棚田にひかれるのは、子供のころの体験が影響しているんだろうと漠然と考えていたわけですが、彼のようなタイプだと、そういう理由が見当たりません。

また、外国の棚田を訪ねたとき、外国人(欧米人)と会う機会があって、彼らと話をしていて不思議だったのは、こういった棚田の風景に癒されるというのです。彼らもまた子供のころの体験というものでは説明できないものを持っています。

そこで考えられるのは、このユングの「普遍的無意識」の「元型」のひとつなのではないかということです。もちろん「棚田」そのものではなくて、あくまでも意識されたときのイメージとしてですが。「原風景」というのは、なおさらそうかもしれません。もちろん「原風景」は個人的なものです。だから「日本人の原風景」という表現は正しくないかもしれません。

これから先、この芸術療法(とくに写真療法)と「棚田」や「原風景」のイメージについて少しづつ考えていきたいと思います。

なぜ「棚田」や「原風景」に癒されるのか。いろんな角度から考えてみる。そのひとつに心理学的アプローチがあってもいいのではないかと考えています。
 
 
 
 
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