映画 『プロミスト・ランド』 を観て。「田舎の存在理由」
マット・デイモン主演、ガス・ヴァン・サント監督による2012年のアメリカ映画。
「エネルギー会社のグローバル・クロスパワー・ソリューションズに勤めるスティーヴ(マット・デイモン)は、同僚のスー(フランシス・マクドーマンド)と共に、ペンシルヴェニアの田舎町へやって来た。彼らの目的は、この土地に眠る天然ガスの採掘権を買うことだ。2人は住民の家を一軒一軒まわって契約を結んでゆく。」(wiki参照)
【ネタバレ注意】
この映画は開発会社に勤める主人公、マット・デイモン演じるスティーヴが、最初は会社の方針通り採掘権を買うことにいっしょうけんめいだったのが、祖父の納屋のことを思い出して、会社を裏切ってしまうという話です。
映画の中で印象的な言葉がありました。
「田舎の存在理由」というものです。
ある農場の男を訪ねたとき、彼の兄弟がイラクで戦って亡くなったことを聞きます。石油のために戦った結果でした。だから彼はスティーヴに言います。
「石油の海外依存を否定する話はけっこうだ」
と。そして、
「わかっているよ。あんたが来たのは、町が貧しいからだ。マンハッタンに井戸はあるか? ピッツバーグには? フィラデルフィアには? わかっている。田舎の存在理由さ」
原発のことを思い出してしまいました。「マンハッタン」を「東京」に、「井戸(採掘井戸)」を「原発」に置き換えてみると、都会と田舎の関係が、まったく相似形であることがわかります。原発が田舎にある理由。だれもが分かっているけど、それを公然とは口にできない事情はどこでも同じなのです。
スティーヴは、あることをきっかけに会社に不信感を覚え、ある写真を見て、祖父の納屋のことを思い出しました。
潮風から納屋を守るために2年ごとにペンキを塗りなおしていた祖父。その手伝いをさせられていたスティーヴは、なんでこんな面倒なことをやるんだ? 頑固だ、いかれていると思っていました。
でも、祖父が「ものを大切に」ということを教えていたのだということに気がつくのです。そして翌日の住民説明会では、開発によってリスクはゼロだといっていたことは嘘で、土地が汚染されるかどうか、正直わからない、と告白してしまいます。
そして彼は言います。
「どこへ進むのか。今、すべてが試されている。失うべきじゃない。僕らの納屋なんだ」
と。「納屋」は「環境」や「生活」と言い換えてもいいでしょう。
開発が100パーセント悪いと声高に主張するわけではありませんが、自分で選択してくださいということです。ただ失ったものは元へは戻らないからよく考えてくださいということを言うのです。
当然会社側からみたらとんでもない発言です。それでスティーヴは解雇されてしまいます。でも表情は明るいです。後悔はないようです。
スティーヴとの別れ際、同僚のスーは「単なる仕事よ」といって去っていくのでした。スティーヴにとってこれは単なる仕事ではなく、生き方の問題であることに気がついたのです。そして自分の正直な気持ちに従った結果でした。
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