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2017/07/10

【愛犬物語 其の百六十四】 国立科学博物館 ニホンオオカミとハイイロオオカミ

170710_1(ニホンオオカミ)

170710_2(ハイイロオオカミ)


上野の国立科学博物館の地球館には、ニホンオオカミとハイイロオオカミの剥製が展示されています。

同じ狼でも、大きさも色も雰囲気も違います。ニホンオオカミはハイイロオオカミと比べると、ずっと優しい感じがします。今、山で見かけても、野犬とは区別がつかないかもしれません。それでも、怖れられていた存在には違いありませんが。

ニホンオオカミについて詳しく書かれた最初の本は、『日本動物誌』(Fauna Japonica)だそうです。イヌ科の部分は、1844年に発表されていますが、これはシーボルトが大坂で採取し、テミンクが研究したものです。

そこにはこのような記述があります。

「野生犬の新種族、すなわち、日本人がヤマイヌ Jamainu と言っているものは、形態、習性、毛質など、どの点から見ても、まったく、われわれの国の狼に比すべきである。ただ、肢が短い点が違っていて、ヨーロッパ狼 Canis Lupus と同族とは、とうてい考えられない。」(平岩米吉著『狼 その生態と歴史』)

とあります。ヨーロッパ狼と比べて、小ぶりだったということらしい。

この前も書きましたが、ニホンオオカミは絶滅したと言われています。だから、1905年1月23日、奈良の鷲家口で、アメリカ人のアンダーソンが猟師から8円50銭で買い取ったものが、最後のニホンオオカミと言われています。

ただし、まだ生存説を唱えている人もいます。目撃情報もありますが、確実に「オオカミだ」と言えるような情報は今のところありません。

ところで、犬の祖先はオオカミであることは確実なようですが、2015年、イヌが初めて家畜化されたのは、中央アジアあたりらしいという研究発表がありました。米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences、PNAS)に発表された研究論文です。

「1万5000年以上前にユーラシア(Eurasia)大陸のハイイロオオカミから進化したイヌが、群れをなして放浪していた野生から、人間の主人の前でおすわりをする家畜へと歴史的飛躍を遂げた場所とそのプロセスをめぐっては、幾度となく議論が繰り返されてきた。」(イヌ家畜化、発祥の地は中央アジアか

これまでも一部の考古学者の間では、中央アジアがイヌの家畜化の発祥地だろうと考えられていましたが、遺伝学的な研究は今回が初めてらしい。長年の謎の解明に一歩近づいた感じです。

論文によると、遺伝子の分析結果は「イヌが中央アジア、現在のネパールとモンゴルのあたりで家畜化された可能性が高いことを示唆している」というものです。

「ネパールとモンゴル」とあるので、2ヶ所、という意味なのか、それとも、チベット高原とその周辺地域という意味なのか、どちらかはわかりません。

チベット高原で家畜化され、それが同心円状に伝播していくなかで、オオカミではなく、より「イヌらしい性格」になっていったというストーリーはわかりやすいとも言えます。

こちらのHP「日本犬のルーツ」によると、日本犬は、日本人の渡来ルートと関連しているということらしい。

「北海道犬と琉球犬は遺伝的に近い関係にある。」とあって、これは人間の遺伝子と同じ状況です。

日本人の成り立ちは、現在のアイヌ族の人たちと沖縄人との間では遺伝的な特徴が似ていることがわかりました。このふたつの集団は、今は南北に分かれていますが、もともとは日本列島にかなり早い段階、約数万年前にたどり着いていた集団の末裔(縄文人)で、その後、約3000年前に別な集団(弥生人)が九州や近畿に入り、日本に拡散していって、混血を繰り返し、現在の日本人ができました。

二重構造になっています。アイヌ族の人たちと沖縄人のふたつは縄文人的DNAが比較的色濃く残っている集団で、その上に弥生人的DNAが重なっているのが今の日本人。

日本犬も、南からか、北からかはわからなくても、少なくとも、大陸から人間といっしょにやってきたということで、二重構造があることがわかったらしい。縄文人は縄文犬を、弥生人は弥生犬を伴ってきたと考えることができるようです。

ニホンオオカミとの関係でいえば、日本犬は少なくともニホンオオカミから家畜化したわけではないということですね。日本列島に来た時にはすでに「犬」だったのです。

その後、オオカミと犬を掛け合わせて強い狩猟犬を作っていったということがあったようです。それについては、明日掲載予定の「埴輪犬」で。
 
 
 
 
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