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2018/03/27

【愛犬物語 其の二百三十八】大阪府東大阪市  暁鐘成の愛犬皓(しろ)の墓

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東大阪市の勧成院に暁鐘成の愛犬皓(しろ)の墓がある。犬の名、飼い主の名、死亡あるいは建立年月日がはっきりしているので、貴重な史実の犬の墓だ。

墓のある勧成院は地図で見ると、東大阪市から生駒市へ抜ける国道308号線にあった。ところが、この「国道」に行ってみると、恐ろしいくらい急で狭い道だったのだ。

大阪・奈良を最短で結ぶ奈良街道の一番の難所、暗峠を通る。古くは「闇峠」とも記されていて、鬱蒼と樹林が茂った文字通り昼なお暗い山越えの道だった。

勧成院は暗峠への途中にある。

境内に入ると、右側に無縁石塔があり、その横に「愛犬皓」の碑が建っていた。

これが大阪の戯作者・暁鐘成が愛犬皓を連れて天保六年(1835)八月二十一日、奈良への途中、暗峠で賊に襲われ、愛犬皓が身代わりになって殺されたことを悼み、同年九月二十一日に天保山下に建てられたものを、翌年八月ここに移した碑だ。

皓と思われる犬の像が座っている。像は古いものなので、風雪にさらされて、頭の部分がほとんど分からなくなっている。しかし、両前足はまだはっきり形が残っていて犬だとわかる。

ちなみに、境内には松尾芭蕉の句碑「菊の香にくらがり登る節句哉」が立っている。芭蕉は元禄七年(1694)年5月に江戸をたち、九月重陽の日(旧暦九月九日)、奈良から大阪に出るときこの暗峠を越えた。

皓の飼い主、暁鐘成というのは不思議な人物だ。鐘成の著作は啓蒙書、名所図会、洒落本、読本、随筆、狂歌などと広範囲に及んでいて、幕末期浪速で最も人気のある戯作者・浮世絵師として名を残しているが、奇人でもあったらしい。浮世絵、文筆、科学、果ては商才にまで通じたマルチタレントな人物だったようだ。

鐘成は、皓の墓を建てるくらいだから、もちろん愛犬家であったし、自宅で鹿を飼うほどの動物好きだったようだ。

愛犬皓を失った後、日本初と言われる犬の飼育マニュアル『犬狗養畜伝』も著した。鐘成の犬に対する愛情を感じられる内容だが、『日本農書全集 60 畜産・獣医』 白水完児「犬狗養畜伝」(農山漁村文化協会)からいくつか抜粋してみる。

「地上に生を受けたものは、どんな動物でも皆兄弟なのです。慈しみ合わねばなりません。ましてや毎日暮らしを共にする動物たちはなおさらです。私は生命ある仲間たちを愛し、亡くなったものたちに哀れを感じます。ここに犬の飼育の心得を上梓して、動物愛護精神の発展に努めたいと思います」

「うっかりして犬のしっぽを踏んだり、何もわるいことをしていないのにたたいたりすると、かみつかれてしまいます。これは人間の方がわるいのであって、犬の責任ではありません」

「もし飼い主のわからない犬を見つけたら保護し、夕方には家の内に入れて、朝は少し遅めに外に出してください。そうして野犬の害から犬を守ってやりましょう」

犬の病気を治す薬の宣伝文も多く記されているので、これは販売を目的に正規に出版された本ではなく、薬の宣伝用の冊子だったようだ。

なお、鐘成著『和漢今昔 犬之草紙(全6巻)』という本には、愛犬皓の墓の絵も描いてある。

鐘成は万延元年(1860年)百姓一揆に関わったとして牢に入れられ、釈放後20日あまりで急死した。

墓所は大阪市北区の勝楽寺にある。門の横にも「暁鐘成の墓所」の標柱が建っていたが、境内はすごく狭かった。

墓碑がどれだかわからずうろうろしていると寺の奥さんが出てきて案内してくれた。門を入ると正面に地蔵が並んでいるが、墓碑は、その後ろ側にあった。墓碑の裏側に「暁鐘成」と銘が入っている。たしかにこれだ。

ところで、奥さんによると、昔はこの勝楽寺は大きかったそうだ。しかし昭和二十年六月七日の大空襲でこのあたりは焼け野原になった。ただ、不思議なことに鐘成の墓石だけはそのまま残った。墓石の立っている位置と方向も一切変わらないそうだ。
  
偶然なのだが、そんな話を聞くと、墓碑まで奇跡を呼び寄せるところが奇人と呼ばれた鐘成らしいのかなと思ってしまう。
 
 
 
 
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