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2022/05/11

【犬狼物語 其の六百一】「ニホンオオカミの起源を解明」のニュース

170710_1(ニホンオオカミ)

 

170710_2(ハイイロオオカミ)

 

1_20220511075601(出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000431.000047048.html)

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「ニホンオオカミの起源を解明」の話題が駆け巡っています。今朝のNHKニュースにも出ました。

「従来のニホンオオカミの起源に関する定説を覆し、更新世(1)の日本列島にはこれまで知られていない古い系統の大型オオカミが生息していたこと、またニホンオオカミの祖先は、更新世の古い系統のオオカミと最終氷期の後期に日本列島に入ってきた新しい系統の交雑により成立したことを初めて明らかにしました。」

詳しくはこちらの記事で。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000431.000047048.html

最新科学技術で、このようなことが解明されるのは素晴らしいことだと思います。

ただ、一方で、何かがわかったら、次にわからないことが出てくるというのが常識で、日本の場合、「イヌ」との交雑はどうなんだろうか? とか。紀州犬や四国犬や甲斐犬には、オオカミの血が混じっていると言われています。逆にオオカミにイエイヌの血が混じっていたとしても不思議ではないような気がします。

直良信夫著『日本産狼の研究』には、次のような記述があります。

「昔の人びとが、山犬もしくは山の犬と呼んでいたものは、真正の狼や野生犬を含めての呼び名であったことだろう。が、実際には見かけの上では、そのどちらともつかない雑犬が主体をなしていたのではなかったであろうか。(略)関東地方に遺存しているニホンオオカミの頭骨類を検してみると、狼本来の標徴を有しながらも、なおかついちじるしく家犬化した頭骨類がはなはだ多い。」

 

それと、中国から「豺狼」という漢字が輸入されたとき、「豺」を「山犬」と訳したことで混乱が生じたことがあります。このとき、中国では「豺」は「ドール」のことだったらしいのですが、日本にはいなかったので「山犬」と訳したのだったと記憶しています。

でも、前々から大型のニホンオオカミ(エゾオオカミのことではなく)と小型のニホンオオカミがいるような話が各地のオオカミ目撃談の中に出て来ていました。もちろん個体差はあるでしょうから、この大小がどこまで「系統」の違いを表しているのかわかりませんが、今回の説で、大型のオオカミの系統はDNAという形で受け継がれてきたことを考えると、まんざら2種類のオオカミがいるといった目撃談は勘違いなどではなく、むしろ信ぴょう性が増したたのではないかとさえ感じます。

「豺」「狼」をふたつに分けるとき、2種類のオオカミを意識していたとしたら、結果的に「ドール」はいませんでしたが、日本で「山犬」と「狼」の二つを区別したことはそれなりに理由があったのではないか、と思います。これからの研究で明らかにされることでしょう。

ところで、一番下に掲載の写真は、奈良県上北山村で明治16年ころ(記憶あいまいだという)捕獲されたとされるオオカミの頭骨です。今回の西日本の取材で撮影させてもらいました。

 

 

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