第6回東京フィルメックス イラン映画
昨日、第6回東京フィルメックス映画祭のクロージング作品「フル・オア・エンプティ」を観にいきました。
この映画祭のコンペティション部門の審査委員長が、この作品を作ったイラン人のアボルファズル・ジャリリ監督。「フル・オア・エンプティ」は、ペルシャ湾岸の港町を舞台にした若者の話です。
若者が村から教師になろうと街へ出てきましたが、教師になるにも、いろんな手続きが必要で、なかなか採用されない。そんなとき、ある娘に一目惚れし、いろんな仕事をして結婚資金をためようとするのですが、ことごとく失敗してしまいます。ところが、鏡ひとつ置いての理髪業を始めたところ、その才能があったようで、「カットが上手」という評判が立ち、連日お客がたくさん来るようになり、お金がたまりました。それで仲人を立てて娘の家に行くのですが、なんと娘は離婚歴があり、子供もいました。しかも、再婚相手(すごい年寄り)もすでに決まっていて、失恋してしまう。
監督のトークショーもありましたが、映画に漂うコミカルさは監督の性格によるものでしょうか。写真の右側の男性がアボルファズル・ジャリリ監督。(左側の男性は、アミール・ナデリ監督。今はニューヨークに住む有名な監督らしい) 監督の家は信仰心が篤く、子供のころはテレビがなく、映画を観たのは革命後だったそうです。
ちなみに映画のタイトル「フル・オア・エンプティ」とは。若者がようやく教師採用の通知が来たのですが、結局採用枠はひとりしかなく、もう一人の女性とどちらかが採用されることになり、役所の人の提案で、ひとつの物を、握ったふたつの手のどちらに入っているかを当てるゲームで決めようということになりました。よく手品でもありますよね? 「入っているのは、どっちの手の中?」というやつです。
結局これでも負けて教師にはなれなかったのですが、「あの女性が教師になれるんだから」といってお祝いし、街の人にお菓子を振舞うという若者なのでした。(イランでは、こういうやり方で物事を決めることがあるんですか?という質問が観客からあり、監督は「ジュークです」と笑っていました)
最後も船の上で女の子に声をかけ、その家族らしい男に「勝手に声を掛けるな!」と、海に投げ込まれてしまって(これはイスラムの国イランではありえる話ですね)エンディング。ハッピーエンドではないのですが、全体的に漂うこの若者のコミカルさや、失敗しても失敗してもめげずにやる姿を見ていると、妙に元気をもらえるような映画なのでした。
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