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2006/02/08

イラン映画『マリアの息子(Pesar'e Maryam)』

在日イラン大使館では、月の初めにイラン映画上映会を開いています。

俺は今回で2回目です。それにしてもイラン大使館の建物は立派ですね。地下に100人ほど入れるホールがあります。映画が終わったあとは、カステラ、ナツメヤシ、ギャズ(ピスタチオが入った甘い菓子。エスファハーンの名物)と、お茶やジュースがサービスされます。これがまたイラン風でいいんですよね。

ところで、今回の映画ですが、『マリアの息子(Pesar'e Maryam)』というタイトルです。監督は、ハミド・ジェベリ、出演は、モフセン・ファルサフィン、ラーフィク・デルガーブリリヤーン、ハーディ・ナーイーニーザーデなど。日本でも、数年前東京国際映画祭で公開されたことがあるそうです。

[あらすじ]
敬虔なムスリムの少年ラフマンは、村のカトリック教会でマリア(ペルシア語ではマルヤム)像を見て、同じマルヤムという名前の、顔も知らない亡き母を想う。村人から慕われる穏やかな神父は、まもなく数年ぶりにこの教会で行われる儀式の準備を着々と進めていたが、ある日、高所から落ちて体を痛めてしまう。ラフマンは、神父に頼まれて、神父の弟を探すために街に行き、街の教会でクリスチャンの少年と出会う・・・。(もらったチラシ「第8回 イラン映画上映会」より)
その少年の助けがあって、なんとか神父の弟を探し出すことができ、ラフマンは弟とふたりで村の教会へ戻る。弟は兄(怪我をした神父)の様子をみて、これは病院へ行かなければだめだと説得し、連れて行く。神父は教会の鍵をラフマンに預けた。ところがすぐ、神父が亡くなってしまう。

という、淡々とした映画。おそらく登場人物のほとんどは素人さんでしょう。ラフマンもそんな感じがしたけど。何もドラマチックなことは起こらない、静かな映画でした。イラン映画らしいと言えば、イラン映画らしい。(それほどイラン映画を知っているわけでもないですが)

以前、第6回東京フィルメックス映画祭のアボルファズル・ジャリリ監督のトークショーを聞きにいった話はブログでも書きましたが、そのとき、監督は、イランでは子供を使った映画が多いという話をしていました。それは、いろんな制約があるらしくて、政治的でも宗教的でもない子供を主人公にした映画は作りやすいという理由もあるようです。

ya第6回東京フィルメックス映画祭

060206
国民のほとんどがイスラム教徒なので、こういうカトリック教徒とイスラム教徒が共存している村があるということが新鮮でした。アルメニア系の教会でしょう。でも、「平和共存」が、とくに強調されているように感じました。まるで教科書のように。

ただ、この映画はラフマン少年の純粋な心がテーマです。ラフマンは、偏見も先入観もなく、神父と心の交流を続けます。少年が教会でマリア像を見たときのシーンは、『フランダースの犬』でネロがルーベンスの絵「キリストの降架」を見るシーンを彷彿とさせました

(掲載の写真は、2005年6月に撮影したエスファハーン・ジョルファー地区(アルメニア人街)にあるヴァーンク教会です)

去年6月イランに行ったとき、ちょうど大統領選挙があって、保守強硬派のアフマディネジャド氏が勝利しました。イランは、今、核問題で揺れています。

これからどうなっていくのでしょう。イラクのように、アメリカや、あるいは国連が攻撃するなどという事態になってしまうのでしょうか。そのとき日本はどうするのでしょうか。人事ではない問題です。イランの石油を買っている日本人にも大きな影響が出てくることは確実です。

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コメント

leeさん

俺も「ギャベ」観ました。
生活がそのまま模様になってギャベに織り込まれていくのがおもしろかったです。ギャべを見ると、その人たちの歴史がわるわけですね。
いつか、遊牧民といっしょに旅をしたいなと思っています。

投稿: あおやぎ | 2006/02/08 21:53

イラン大使館で開催されているのですか。。。
近かったら行きたいのですが無理ですね(>д<)
私もイランの映画が好きです。
イラン大使館主催のイラン映画祭に2度行きました。そこで 映画を見たり
マジドマジディ監督の話を聞きました。
「パンと植木蜂」 「ギャベ」等を見ました。

ヴァーンク教会を見学しましたけど 
壁画のキリストが処刑される前の壁画にショックで 
しばらく立ちつくしてしまったのです。
遠藤周作の「沈黙」の場面のように
拷問をを受けているキリストの壁画でした。

私が 旅の基点として滞在したアンザリにも
高い塀に囲まれた キリスト信者のための墓地がありました。

投稿: lee | 2006/02/08 21:10

Mさん

コメント、ありがとうございます。
何もドラマチックなことが起こらないイラン映画、意外と好きなんです。そういう意味で、これもいいですが、イラン好き、映画好きという人でないと、なかなか観ないでしょうね。

イラン大使館の上映会はいいですよ。

投稿: あおやぎ | 2006/02/08 18:07

 本作のエントリーでなくて申し訳なかったのですがTBありがとうございました。
 わたしがこの作品を観たのは東京国際映画祭の時でした。その後CSのシネフィルイマジカでも放映があった気がします。ずいぶん前にみたものなので記憶がおぼろげなのですが、イランにも普通にキリスト教の教会があることにちょっと驚きました。
 イラン大使館も定期的に上映会を行っているんですね。機会があったら出かけてみたいです。

投稿: M. | 2006/02/08 11:43

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