マダガスカルの旅(4) 南半球
マダガスカルは、赤道の南、南半球にあります。
太陽は東から出て西に沈みます。あたりまえのことを、何をいまさらと思うかもしれませんが、日中の太陽が北側に輝くのが、北半球とは違うところです。つまり、太陽は、右から左方向へ移動して行くように見えます。
そんなことどうでもいいと思われるかもしれませんが、俺たちのように写真を撮っている人間にとっては、かなり気になる部分なのです。いや、けっこう重大事です。光の当たり方は時間によって当然変化していきますが、しばらく待てば、太陽がこう動くから、影はこうできるだろうと予想するときもあります。それが、南半球では、北半球とは逆になるわけです。
これに初めて気が付いたのは、10年ほど前、インドネシアのジャワ島の列車で、ジャカルタからジョグジャカルタへ移動しているときでした。強烈な太陽を避けようと、進行方向(東方向)に向かって左側(つまり北側)に席を取りました。ところが暑いんですよね。太陽が左側に照っています。あれっ? 俺はてっきり乗るべき列車を間違えてしまったのかなと思ったのでした。
こんなこと、普通の人にはどうでもいいらしく、当然ガイドブックにも載っていなかったので、「ああそうか。南半球だと、太陽は北に輝くんだ」と気が付いたときは、なんだかとてつもなく重大発見をしたような気がしたものです。
ムルンダヴァは、海岸沿いの安ホテルに泊まりました。いまだに名前を知らないんですが。
ここを紹介してくれたのは、空港からタクシーに乗ったドライバーの知人で、この「マダガスカルの旅」で「地元ガイド」として何度か登場してもらった彼、ツィンギー出身のマロハオさん。めずらしく英語をしゃべりました。(ほとんどはフランス語ガイドばかりです)
アロハシャツを着て、スキンヘッド。爪楊枝をくわえていて、見るからにうさんくさい、ジゴロのように見えましたが、あんがいいいやつでした。いいやつ過ぎて、キリンディー公園では、野生動物なんだから見れない日もあると覚悟していたので、「もういいよ」と思ったのでしたが、レムールを発見するまで長い間ジャングルを歩かされました。前日「必ず見れる」と約束したんだから、約束を果たすのがプロ。そういう意味で、彼は仕事熱心とは言えるようです。人は、見かけによりません。それはマダガスカル人も同じ。
ジャングルも半袖シャツ、サンダル履きで、虫には無頓着に見えた彼ですが、蜘蛛を発見すると異常に反応します。どうしてかというと、以前、毒蜘蛛にやられたそうです。やっぱり、ジャングルはガイドがいないと危ないこともあるようです。俺も、もうすこしで、蜂の巣に触れてしまいそうになりました。「危ない!」と注意されたのですが、これは写真家の習性なのでしょうか、離れる前に、写真を撮るのだけは忘れませんでした。
彼もたいへんです。今はシーズンオフなので、観光客も少なく、ガイドの仕事がありません。我々は、2日間お世話になりましたが、次にやってきた一人旅の日本人女性は、彼を雇わなかったし、俺たちがアンタナナリヴへ帰る飛行機に乗るために空港へ行ったとき、彼もタクシーに便乗し、次の観光客を待ちましたが、団体ツアーさんだけで、個人旅行者には出会えなかったようです。その日も、営業活動は不発に終わってしまいました。
仕事熱心なマロハオさん。少なくとも日本人に声かけるときは、爪楊枝はくわえない方がいいと思うんですが。
ムルンダヴァの夜(特に海岸沿い)は暗い。今はシーズンオフで、夜は通りを行き来する観光客も少ないので、なおさら寂しく感じたようです。でも、だからこそなのか、見上げると、満天の星空に感動します。オリオン座が真上に輝き、天の川がはっきり見えました。南十字星は、どれだろう? もっと星座に詳しかったらよかったのですが、知らなくても、美しいものは美しい。
掲載している星空の写真は、東側を向いて撮っています。空が若干オレンジ色になっていますが、このあと10分後、マングローブ林の上から月が昇りました。
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