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2006/07/29

俺はどうして犬に噛まれるのか?(1)

060729
アジアを旅していると、犬にはよく噛まれます。自慢話じゃありません。どうしてそうなのか? 俺なりの答えは、最後「俺はどうして犬に噛まれるのか?(4) 」に書くことにしているので、まずは、噛まれた話を聞いてください。

 ※ 犬好きな方には辛い内容が含まれているかもしれませんので、この先は読まないことをお勧めします。

初めて噛まれたのは、中国青海省西寧郊外のタール寺。1984年のことです。この年、初めて中国へ行きました。そして初めて一眼レフのカメラを持っていった年でもあります。だからよく覚えているんですよねえ。

タール寺は、チベット仏教寺です。当時は、まだ外国人旅行者はほとんどいませんでした。たしかまだ日本では中国の個人ビザが取れなかったと思います。我々外国人バックパッカーは香港でビザを取って中国へ入っていました。

そうです。忘れもしません。3月の寒い日の午後です。寺の通りを歩いていくと、ある建物の門にたむろしていた犬が吠え出したのです。体長50cmくらいで、チャウチャウ犬(?)。それほど大きな犬ではありませんでした。

それで別にあわてたわけでも、怖くなったわけでもありません。日本でもたまにこういう場面に出くわしていましたが、大回りをして、無視してゆっくりと通り過ぎれば何事も起こらないことを知っていたからです。

ところがです、だいぶ犬から遠ざかったのに、背後でまだ鳴き声が聞こえていました。「しつこいやつ」と思いながらも、先を急ごうとちょっと小走りになったとたん、突然犬の鳴き声が止み、かわりにタッタッタッ・・・という音が背後から近づいてきたなと思った瞬間、左足のふくらはぎに衝撃。そしてすぐに激痛に変わりました。

「痛ーーーッ!!!」

俺は思わず叫び声を上げてしまいました。見るとふくらはぎに犬が噛み付いています。なんて卑怯な。後ろから狙うとは。俺はしりもちをついて、足をばたばたさせて犬を追い払おうとしましたが、ウーウーとうなって離れようとしません。犬と格闘したのは短い間だったのでしょうが、すごい長い時間に感じられました。

近くにいた人民解放軍の兵士が騒ぎを聞きつけて駆けつけてきて、犬を追い払ってくれました。犬が遠ざかり、あらためてふくらはぎを見ると、ジーパンの上から噛まれた歯型に血が滲んでいました。解放軍の兵士は、俺をどこかに連れていこうとしました。彼らのキャンプに医務室があったのでした。

そこで、ジーパンを脱ぎ、噛まれたあとを消毒してもらいました。痛みも和らぎ、だいぶ落ち着いてくると、今度はジワリジワリと別な思いが頭の中を占領しだしました。それは走馬灯のように、くるくると目の前を回り始めたのです。「狂犬病」という3文字でした。

俺は、医務室の兵士に、紙と鉛筆を借りて「狂犬病」と書いて差し出しました。すると彼らは、「心配ないよ」といった感じで微笑み、手を横に振ったのです。気休めでこんなことを言うのだろうと思って「我行病院」と書きましたが「必要ない」みたいにまた手を振るのです。

どうしてそんなことを言うんだろうと不思議に思ったのを彼らは察したようで、兵士が自分の親指を差し出したのです。なんだろうと思ってみたら、赤チンが塗られた指でした。これはあの犬に噛まれたというのです。これを見て、俺もやっと安心することができました。そしてあの犬は、兵士たちが飼っているペットだということも判明したのでした。

結局、町の医者にも行かずに済ませました。彼らの言うことを信じるしかなかったのです。それにしても、犬というのは本当に噛む動物なんだと、あらためて知ることになったのでした。(続く)

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