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2006/10/13

中朝国境の朝鮮族(3) 白頭山

061013

図們から、延吉、二道白河とバスで移動しました。

二道白河に1泊し、翌日ふたたびバスに乗り、長白山へ向いました。「長白山」とは中国での呼び方で、朝鮮名では「白頭山」。朝鮮民族の聖地です。標高2744mの火山の頂上付近にはカルデラ湖、天池があります。平均水深は213mもあるそうです。

金正日(キム・ジョンイル)は、白頭山で生まれたと公式に言っていますが、本当はソビエト連邦の極東地方の軍事教練キャンプで生まれているそうです。自分に神秘性を持たせるための嘘でしょうか。

バスの終点からは絶壁と、67mの高さから水が落ちる長白瀑布が見えました。ポプラが黄色く色付き始め、滝から流れている川の水も澄んでいてきれいでした。川に架かる橋を渡ります。写真屋が客待ちしていました。観光客がたくさん写真を撮っていましたが、なるほどいいアングルには違いありません。俺も真似して写真を撮ります。

そこから200mくらい行くとガレ場になり、その急坂を登らなければなりませんでした。石が落ちてくる危険な道です。もっと楽な道もあったのですが、それは帰るときに気がつきました。

ある場所まで上ると、ようやく平地になりました。すると、目の前に天池の湖面が現われました。対岸は北朝鮮? 監視所や国境警備の兵士などは見当たりません。もっとも対岸へ渡るには、ボートなどはないので泳ぐしかなく、普通では無理です。湖の周りは想像以上に切り立った山で、一周する道などもありません。

天気が回復し、湖が青く輝いていました。ぽかぽかして気持ちがいい。それにしても、このせっかくの絶景なのに、観光客が落としていくゴミが多いのは残念でした。ビール瓶のかけらなども落ちていて危険です。

パンと缶詰の豚肉とピーナツで昼食。食事後、天池を見渡せる場所まで上りました。いい眺め。ほんとに対岸は北朝鮮なのだろうか。白い建物やパイプが見えたので、望遠レンズで覗いてみましたが、人らしき姿はありませんでした。

ハルピンの大学生と韓国人の5人のグループと知り合いました。韓国人は、オーストリアに住むエコロジストで、中国人学生たちと共同で植物調査をしにやってきたのだといいました。

韓国人は日本語をしゃべりました。「富士山に登ったことはありますか? 丹沢には?」と聞かれ「どっちも行ったことがありません」と答えると、「珍しいですねぇ」と軽蔑したように言われました。別に行かなくてもいいだろうと思いますが。

天池に棲む怪獣「テッシー」の噂を聞いていたので、彼らにその話をすると、「怪獣なんているはずがないですよ。第一、この天池は泉の水で、とても澄んでいるので、魚さえも棲めないんです。餌のいない湖に、どうして怪獣なんか棲めるんですか?」と言うのです。まったく理屈はその通り。でも・・・。

韓国人に「南北統一も近いのではないですか?」と聞いてみました。すると、韓国人は語気を強めて「とんでもない!あいつらの頭は固いんだ。統一を考えているようなジェスチャーを見せてるだけ」と言い放ちました。俺などが単純に口を挟める問題ではないなと、それ以上突っ込みませんでした。北朝鮮や韓国について、俺はほとんど何も知らないことに気がつきました。

俺が白頭山に行ったのは1991年ですが、1992年に韓国と中国の国交が樹立されてからは、多くの韓国人がやってくるようになりました。彼ら韓国人は、地元の朝鮮族からはあまり良く思われていないそうです。というのも韓国人は経済力を自慢し、地元の朝鮮族を馬鹿にするからだと言われています。白頭山に韓国の国旗を立てる輩も現れて、今は禁止されているようです。日本人も外国でひんしゅくを買うことがありますが、韓国人もあるようです。このエコロジストはどうか知りませんが、なんとなく人を馬鹿にしたような態度は、正直気にくわなかったですね。

たいていの観光客が引き上げてから、俺も下山しました。バス停の近くに温泉があったので入りました。中は薄暗く、5m四方ほどの湯船からは湯気もたっていません。入ってみると、35度くらいの温いお湯で、深さは予想以上に深くて80cmくらい。底はぬるぬるして滑って気持ちが悪い。でも一風呂浴びることができたので、さっぱりしました。外へ出ると、温泉玉子が売られていました。

宿に泊まり、翌朝5時半に起きて、もう一度天池へ向いました。朝の天池を見たかったのですが、あいにく山には雲がかかり、風も強い。天池に着いたはいいのですが、寒くてしかたありませんでした。雲がすごい速さで湖面を西から東へと移動しています。俺の鼻水も糸を引いて西から東へ飛ばされます。前日の天気とぜんぜん違う。やっぱりここは山なのです。たまに雲間から太陽が見えますが、すぐに隠れてしまう。

その雲の移動でできる湖面の影が不気味です。怪獣の正体はこれか? 神秘的な湖面に、雲の影が走るのを見て「怪獣」を想像するのは凡人だからでしょうか。韓国人にまた馬鹿扱いされそうです。ただ、金正日の嘘よりは夢があると思いますが。

俺は鼻水をシャツの袖でぬぐい、下山することにしました。

Ya_2中朝国境の朝鮮族(4) 吉林の老人節

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