イタリア映画 『苦い米』 2 (ネタバレ注意)
以前、イタリア映画『苦い米』について書いてから、観たい観たいと思っていましたが、ようやくビデオを借りて観ることができました。
『苦い米(Riso Amaro)』 1949年度作品
監督:ジュゼッペ・デ・サンテス。
出演:シルヴァーナ・マンガーノ。ヴィットリオ・ガスマン。
イタリア北部ポー川流域の水田地帯が舞台の季節労働者「田植え女」たちの映画です。イタリアはヨーロッパでの米どころ。FAOの資料(2004年)によると、コメ生産量は世界で27番目です。ちなみに、第1位は中国ですが、日本は11位です。
こういう「田植え女」は、機械化と除草剤の発達で、すでに過去のものになりました。だから、この映画は当時の様子を知る貴重な資料でもあるようです。最近はエジプトあたりから安いコメが入ってくるようになって、水田自体が減っているようです。
イタリア北部各地から集まった女性たちが、列車に乗って水田地帯へ向かうところから映画は始まります。
ワルターとフランチェスカは刑事に追われる泥棒カップルです。刑事に見つかった彼らは、ばらばらになって逃げます。フランチェスカは「田植え女」たちに紛れ込み、そこで、シルバーナ(シルヴァーナ・マンガーノ)と知り合い、彼女の口利きで、いっしょに働くことになります。ワルターも、あとで同じ水田地帯へ逃げてきます。
たくさんの女性たちがいっせいに田んぼで田植えをするシーンは圧巻です。そして歌をみんなで歌うんです。田植えの仕事の辛さを少しでも和らげようと、やっぱりアジア同様、田植え歌はあったのですね。
細かいことですが、苗をまっすぐにするために、田植え枠を転がすとか、縄や棒を使って、それに沿って植えるということは、映画の中では見当たりませんでした。大雑把な田植えという感じでした。
フランチェスカは、改心し、警察に行こうとします。一方、シルバーナはワルターに惹かれて、いっしょになることを決心します。ワルターは倉庫から米を盗もうと計画しますが、シルバーナはそれに加担してしまいます。祭の準備でみんな忙しくしている裏で、シルバーナはワルターの指示で水路の堰の板をはずして大量の水を引き入れ、田んぼを水浸しにしてしまいます。
それまでいっしょに何十日も働いてきた仲間を裏切ってまで、愛する男に従ってしまう女の性を見た気がします。俺が男だからでしょうか。正直、ここまでやってしまうシルバーナに違和感を持ちました。男女逆なら、こうはしなかったでしょう。男は、つい、社会的なことを気にしてしまい、あれほどまで「完璧」に水浸しにしない、と思うのです。だからといって、女はどうの、男はどうの、という話をしたいわけではないのですが。シルバーナが特別だったのかもしれないし、反対に俺の感性が変わっているのかもしれません。
みんな、たいへんだーッ!ということで、田んぼに行って排水しようとします。悪事に気が付いた、フランチェスカと仕事を監督する軍曹は、ワルターとシルバーナを探して追い詰めますが・・・。ここから先は語らないことにします。結末は意外な展開です。
この映画はドキュメンタリータッチということも相まって、シルバーナやフランチェスカという「田植え女」を通して人間を描いているいい映画だと思います。
ところで、『Riso Amaro』は『苦い米』という邦題になってなっていますが、「悲しい笑い」という意味もあるという情報を見つけました。参考までに。
「苦い」という形容詞 "amaro" を「笑い」の意味を持つ名詞 "riso" につけて "riso amaro" という熟語を作ると『直訳』の「苦笑い」ではなく「悲しい笑い」って意味になるんですよ
(http://www.juno.dti.ne.jp/~shuyo/italiano/totsugeki/it0033.txt 参照
)
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コメント
あおやぎ様
迅速なるご回答、助かります*^^*
高齢の父が、どうしても観たいという話をしていまして・・
早速、情報を元に動いてみたいと思います。
投稿: こしいし | 2008/12/08 22:41
こしいしさん
2年も前の話なので、今もあるかどうかわかりませんが、私が借りたのは、高田馬場のTSUTAYA です。
しかも、DVDではなくて、ビデオでした。
この情報、お役に立てるかどうかわかりませんが・・・。
『苦い米』、いい映画だと思います。
お勧めします。
投稿: あおやぎ | 2008/12/07 21:22
はじめまして!
お邪魔致します。
私も「苦い米」のDVDレンタルを捜しているのですがなかなか見つかりません。
何処のレンタル屋さんで見つけられたのか、教えていただけませんでしょうか?
投稿: こしいし | 2008/12/07 21:00
棚田研究では多くの賞をおもらいのようですね 千葉辺りでも希望者を募り棚田の再現ができつつあるところもあるようですし 日本人の一生懸命な時代の貴重な財産ですものね 自宅の前は水田です 転居して2年未満なのですが お米をつくらない、つくれない?農家がますます増えているように思えます
投稿: shkphappy | 2008/11/03 06:51
やはり、水田地帯は健在ですね。青々とした稲は美しい。
たまたま昨日でしたか、「世界ふしぎ発見」で、イタリアをやってましたが、リゾットの話で、水田の稲が映りました。
たぶん、あれもポー川沿いの水田で撮られたものかもしれませんね。
投稿: あおやぎ | 2008/11/02 22:21
昨年の6月の写真です ポー川は2004年に見ています
トリノはそれほどエキサオティングな町ではありませんでしたが
おしゃれなカフェやバーはた~くさんありましたから
ナイトライフは楽しいかもしれません
投稿: shkphappy | 2008/11/01 20:57
shkphappyさん
コメントありがとうございます。
昔、ベトナムで知り合ったドイツ人から、イタリアで棚田を見たという話を聞いて以来、ずっと気になっていたのですが、この映画を観て、水田の状況がわかりました。
エジプトから安いコメが入ってくるようになって、イタリアの水田は減っていると聞きました。
shkphappyさんが、ミラノからトリノへ列車で移動したのは最近のことでしょうか。
もしそうなら、まだコメは作られているんですね。
私も、いつかイタリア産のコメ料理を食べに行きたいと思います。
投稿: あおやぎ | 2008/11/01 18:04
イタリアはミラノからトリノへ列車で移動する際 多くの水田を見ました 映画のタイトルは「苦い米」だったのですね 1940年代の映画でしたか 我々の世代は望月優子主演の「米」があります 母物でよくでていた女優さんでしたが 政界入りをしていたとは 今 ウイキペディアで知りました いろんなことを思い出させてくださってありがとうございました
投稿: shkphappy | 2008/11/01 12:54