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2007/05/23

2007初夏、車中泊の撮影旅(4) 仙北平野、雄勝から、山形県寒河江

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5月23日、水曜日、晴れ

昨日の話から。

午後、岩手県から栗駒山を経由して秋田県に戻った。横手市の中心地から、国道13号を北へ10kmほど行くと、県道11号線がある。この入り口はわかったのだが、入ったら、迷ってしまった。集落の狭い道にはまり込み、何度も人に尋ねながら北を目指した。運よく今は農作業をしている人がたくさん出ているので、道を聞くことは難しくない。

ようやく県道50号線に出たので、そこからは大丈夫。朝と同じところから「大台スキー場」の看板を右折して、ゲレンデを登って展望所まで。午後4時着。強烈な太陽の光が、水田の水にキラキラと反射している。じっと目をこらすことができない。まぶし過ぎる。

まだ夕日までは時間があるので、昨日の日記の追加分を書いていて、ふと、水田地帯の方を振り返ると、飛んだ。人が。パラグライダーだったのだ。斜面に人がいることは気がついていたが。てっきり写真を撮るカメラマンで、俺と同じように夕日を待っているんだとばかり思っていた。

水田地帯を飛ぶパラグライダー。どこに着地するんだろう。気持ちよさそうだ。俺も飛んでみたい。

昨日も夕日がきれいだった。散居集落がシルエットに浮かび上がり、水は赤く輝いた。テレビの撮影も来ていた。

散居集落の夕方の写真は、こちらでどうぞ。「2007初夏、車中泊の撮影旅(付録2) 秋田県仙北平野の散居集落」

スキー場を下り、県道50号線、11号線で、国道13号線に出た。8時過ぎていた。山形方向へ向かう。でも昨日は長距離運転したので、もう運転はやりたくないので、湯沢市の南、雄勝の道の駅おがちに泊まる。

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そして、今朝。5時半に起きて、洗面所にいったついでに、インフォメーションコーナーに行ったら、興味深い展示を見た。

湯沢雄勝は、「小町伝説の郷」でもあるらしい。あの平安時代の女流歌人、美人として有名な小野小町だ。道の駅に置いてあったパンフレットによると、全国各地に小町伝説があるが、旧雄勝町小野生まれとする説が有力になっているそうだ。初めて聞いた。

そう言われてみれば、ここには美人が多いような・・・。(昨日の夜着いて、まだ女性なんて見ていない。いい加減)

興味を持ったのは、もうひとつあった。(こっちの方が俺にとっては重要) パンフレットによると、

「菅江真澄は江戸時代の1754年に、三河国に生まれました。30歳のころに故郷を旅立ち、・・(略)・・当時は辺境の地であった東北と北海道をめぐり歩きました。真澄がもっとも長く滞在したのが秋田・・(略)・・。真澄は、訪れた土地の歴史や自然景観、人々の暮らしや習俗などを図絵と文章で記録した。それらは日記、随筆、地誌など200冊以上の著作となり、その半分近くが国の重要文化財に指定されています」

この菅江真澄に興味を持った。俺がやっていることと同じようなことをやっていた人間が、250年前にもいたんだなぁと思うと、親近感が沸く。日本地図を作った伊能忠敬にもあこがれるが、これからは、もうひとり増えた。

彼が訪ねたゆかりの地が、この近くに点在していることを知ったので、いくつか訪ねてみることにした。国道13号線から、高松川沿いの県道51号線を栗駒山方向へ入っていく。

途中、緩やかなカーブを曲がったとき、ハッとして急停車した。満々と水を湛えた水田の中に、小さな神社か祠があったのだ。なぜか俺は「いい」と直感して、写真を撮り始めた。風もなく、田んぼの水に波もなく、まるで鏡のように祠が水面に映っている。

あぜ道を歩いて行けるようになっていたが、その入り口に小さな木の鳥居があった。体を折り曲げないとくぐれないくらいほどの高さ。これがまたいい(女の子ふうに言うと、「かわいい」?)。しつこいくらいに写真を撮った。

写真を撮り終わり、その先に行くと、田んぼは棚田状になってきた。秋田県には「棚田百選」に認定された棚田はないが、それは役所が申請しなかったというだけで、こうしてちゃんと棚田はある。りっぱなものだ。

三途川渓谷があった。橋の欄干から40m下の流れを見る。深い谷だ。青々とした木々の間を、清流が流れている。ここは、菅江真澄も訪ねた場所だ。当時は、もちろんこんな立派な橋はなく、丸木橋が渡してあった。苦労してこの渓谷を通ったことが記されているらしい。

三途川とはよく言ったものだ。当時、ここは文字通り、いったん向こうに渡ったとしても、再び戻ることができないくらいの難所だったのだろう。だから三途川とつけた人の感覚はわかるような気がする。

さらにその先、桁倉沼へ。菅江真澄もこの沼の絵を残している。全体を見渡している絵だが、どこから描いたものだろうか。沼に沿った小道を歩いたが、あまり人が来ていないらしく、草が生い茂っている。なんだか熊でも出そう。途中には、「熊、出没」とか「遭難者多数」とかいう看板が、やたらたくさん立っていたので、小心者の俺は、気になってしかたない。

雄勝に戻るとき、さっき写真を撮った祠の近くに、商店があったので停まった。飲み物を買ったついでに(というか、話を聞くついでに飲み物を買ったのだが)、店の奥さんに、「あの田んぼの中の祠のことなんですが、名前わかりますか?」と訊いてみた。突然、こんなことを訊かれたので、俺を不審がっているのがよくわかった。でも、だんだん意図を理解してくれたようで、顔つきが穏やかになっていった。

「あれは『田の神』と呼んでます。正式名称ですか? ねぇ? じいちゃん、あの田んぼの神社、何て言ってるかな? そう? やっぱり『田の神』だよね」

村の祠ではなくて、個人所有のもの。だから村祭りなども行われず、持ち主がお供えをあげるくらいだという。でも、なんかいいんだよなぁ。バリ島を思い出した。

バリ島の田んぼにも、あぜ道に祠がたっている。お供え物のおこわに蟻がたかっていたなぁ。コメは自然からの贈り物。だから、コメを自然(蟻)に返すのは当たり前。お供え物作りにかなり時間をかけるのも当たり前だという。バリ人の自然観だ。

ところで、バリ島では「稲の神様」を「デヴィ・スリ」という。「デヴィ」は、たぶんあの「デヴィ婦人」の「デヴィ」と同じか? 意味は「女神」なので、やっぱり違うかなぁ。 「スリ」は「稲」のこと。

町に戻り、派手な赤色の建物、小町堂へ寄ってみた。菅江真澄は小野小町伝説についても調べたらしい。大きな駐車場とみやげ物屋があり、ちゃんとした観光地だ。まだ7時なので、観光客の姿はなく、小町堂について説明するアナウンスは、俺一人のためにだけ延々と流れ続けた。

雄勝から国道13号線をひたすら南へ。県境を越えて山形県。鳥海山と水田が見えるポイントがあった。写真を撮る。

新庄市、村山市を経由して、河北町に。実家で一休みして、寒河江市まで行った。

出身高校のある長岡山には「つつじ園」ができていて、満開を、ちょっと過ぎたつつじの花とふじの花が見ごろだ。「つつじ園」から高校へも寄ってみた。卒業してから何十年ぶりかで高校の正面に立った。校舎は変わっていない。

昔、冬の体育の授業はスキーだったが、この「つつじ園」の斜面でやったような気がする。

苦痛の何ものでもなかった体育の授業。スキーやマット運動など、個人競技ならまだましだ。バスケットボールが最悪。ルールが覚えられない。しかも走りっぱなしで疲れる。「俺にボールをよこすな」と、いつも思っているのに、なぜか友人は俺にパスしてくる。あのやろう。

そう言えば、あるとき、昼12時ころの山形行き列車に乗りたくて、先生を騙して(と、言っても、先生も勘付いていたはずだが)、授業の終わる15分くらい前に、「先生、どうしても我慢できないので、トイレに行っていいですか」といって、教室を飛び出し、一目散に駅に走り、その列車に飛び乗った思い出がある。

あれは、楽器を見に行ったのか。ドラムのスティックでも買いに行ったのか。文化祭でロックバンドを組もうとしていたが、うちの高校では初めてだったので、先生たちも、練習用の部屋を貸してくれたり、協力的だった。今から思えばずいぶん理解のある先生たちだった。まぁ、見かけ的には「つっぱり系」ではなかったので、許されたのかもしれない。やっていた曲は、矢沢永吉キャロルの曲だったのだが。内面では「つっぱり系」以上に「ひねくれ系」or「シニカル系」であったかもしれない。

午前中の授業が終わってからでは間に合わないので、嘘をついた。たぶん、これもバンド活動として、暗黙の了解を得ていたのではなかったかなと思う。妙なことを思い出した。


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コメント

すずきさん
コメント、ありがとうございます。河北町を出て、今は富山県です。大雨です。運転は気をつけないと。
「冷たい肉そば」の報告は、旅が終わったあとですね。まだ食べていませんので。

投稿: あおやぎ | 2007/05/25 14:49

こんにちは。

私はあおやぎさんのブログと写真を楽しみにしている一人ですが・・・
今回の『祠』の写真、とても好きです。
写し出された一瞬の風景に、見入ってしまいます。

距離を運転されているようですが、体調・運転共に、充分にお気を付けてくださいね。
素敵な写真、楽しみにしています。

投稿: donga.jp すずき | 2007/05/24 14:53

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