2007初夏、車中泊の撮影旅(7) 砺波平野の散居集落と、「宮沢賢治」
5月26日、土曜日、晴れ
昨日の午後の続き。
富山市を通過し、新湊市から県道11号という南に向かう道に入る。25分ほどで庄川に。砺波平野の展望台のある夢の平スキー場へ行くのは、あとにして、とりあえず、温泉を探す。どうせこの大雨では何も見えないだろうし。明日の朝に賭けることにする。やることがないので、温泉でも入ってのんびりすることにした。
寺尾温泉という立派なホテルがあって訪ねたが、フロントで、入浴だけのお客さんは取っていないと断られた。そのかわり、近くに何軒か入れる温泉があるとのこと。どれかお勧めの温泉ありますか?と訊いたら、「私は他のところに入ったことないのでわかりません」という。そりゃそうだね。
それで、庄川荘というところへ入った。入浴500円。露天風呂もあった。雨に打たれて入る露天風呂もおつなもの。寒くないからいい感じ。宿泊もできるし、食事もできる公営の施設だ。
さっぱりしたあと、コンビニに行って弁当を買って食べて、展望台に上った。あとは展望台で泊まって、明日の朝を待つつもりだった。
ところが、夕方5時半ころ、展望台に上ってみたら、雲がすごい速さで流れてくる中、ときどき、平野が見える瞬間があった。それでカメラを持って、再び上に。
雨を避けるためにウインドブレーカーをカメラといっしょに頭からスッポリとかぶり、三脚に構えて待った。すると、また霧(雲)が晴れて散居集落の砺波平野が姿を現した。すかさずシャッターを切る。
そして、こんな偶然があるのだろうかというふうに、西の雲間から、ふた筋の光が差し込んで、田んぼの水を輝かした。このドラマも、ものの1分で終わってしまった。デジカメに換える時間はなかったので、フィルムだけで写真に撮った。↑に掲載の写真は、そのあと、デジカメで撮ったもの。(このフィルムで撮った写真は、旅が終わってから、あらためて掲載します)(帰宅後、この写真を掲載しました。こちらでどうぞ。「2007初夏、車中泊の撮影旅(付録5) 富山県砺波散居集落」2007/6/20)
雨が降っていたので、まったく諦めていただけに、こんなシーンを撮れたことの幸運に感謝。万が一の可能性を考えていたことはいたのだが。まさか本当になるとは。ラッキー!
でも、良いことがあると、悪いこともある。それが世の常だ。熊にでも襲われるかなぁ、と冗談で思っていたが、その「悪いこと」は、予想外なものだった。ある意味、熊よりも・・・。
展望台までの道は、とくに夜はほとんど車も通らない山道だ。横になっていると、風の音だけ。そして、午前3時。風の音に混じってかすかに蜂の鳴くような音が聞こえてきて、目が覚めた。俺は旅をしていると動物的勘が強くなるようで、危機予知能力とでもいうようなものも備わるらしい。それで目が覚めたのだろう。
その蜂のような音は、だんだん大きくなっていき、その正体がわかってくると、心臓がどきどきしてきた。なんと、それはバイクの爆音だった。もちろん、普通のバイクでここを通りかかったということではない。例の、極端に大きな音でバイクを走らせるにいちゃんたちが、エンジンの空ふかしを始めたのだ。それも、俺の車から40mのところで。3台いたようだ。時々車の前までやってくる。カーテンのバティックの模様が鮮やかに浮かび上がる。様子を伺っているようだ。
エンジンの空ふかしも、ちゃんと練習しているんだね。よく聞いていると、エンジンをふかすと高音、緩めると低音になるのを利用して、あるリズムというか、音楽にしているのだ。今まで、気がつかなかったが、彼らのバイクのエンジン音には、メッセージがこめられている(?)。かなり暴力的で迷惑な音楽だが。彼ら仲間内では、エンジン音に、上手、下手があるのだろう。だから、こうして練習しているのではないだろうか。
ぶーぶぶ、ぶぶーぶ、ぶぶーぶ、ぶぶー
風の音といっしょになった。
どーどど、どどーど、どどーど、どどー
あれっ? もしかしたら、彼らが奏でているのは、宮沢賢治の『風の又三郎』?
とにかくうるさくて寝ているわけにはいかないが、かと言って、「うるさい!」と怒鳴って出て行くほど俺には度胸がないので、車の中でじっとしていた。ちょっかいかけられないといいなと思った。(むこうが、こっちを不審がって近づかなかったりして) あぁ、そういえば、似たようなことが昔、中国であったなぁと思い出していた。
昔、中国新疆ウイグル自治区をロバ車で旅したことがあり、あるウイグル族村で夜になり、建築中の民家に泊めてもらったことがあったが、その夜、子供たち(なんと大人も)が、寝袋で横になっている俺のところに小石を投げ続けた。そのときも、相手をしてしまったら、ますます投げられると思ったので、ひたすら我慢して、彼らが興味を失うまで、寝袋でじっとしていた。
40分ほどで、この極端に大きな音でバイクを走らせるにいちゃんたちは去っていった。人の嗜好はさまざまだ。夜中の3時に山の中までわざわざやって来て、バイクのエンジンで音楽を奏でるのも、すごい「趣味」だが、車中泊しながら全国を走り回るのも、すごい「趣味」かもしれない。
結局眠れなくて、夜を明かしてしまった。展望台に上ってみたが、うす雲がかかって、写真的にはそれほどいい感じではない。やっぱり、昨日のシーンにはかなわない。そしてそのシーンといっしょに、あの恐怖の「宮沢賢治」の『風の又三郎』も、一生忘れない思い出となるに違いない。
ここに立っている看板によると、散居村の各農家は、東向きで、周りの田を耕作しながら、カイニョと呼ばれる屋敷林に包まれ、100~150mづつ離れてたっている。・・・中世から開かれ始め、とくに戦国の争乱が収まった近世初頭には用水も整備され、急激に開発が進んだ。散居村は、この過程で広がった。
展望台をあとにしようとしたとき、車の下に何かが漏れているのを発見。匂いを嗅いだらガソリンではなさそう。たぶんエンジンオイルだ。まずい。一難去って、また一難か。
一番近いガソリンスタンドまでいって、車の修理できるところを聞いたら、運よく、次の信号のところに大きな修理工場があった。
診てもらったら、やっぱりオイル漏れ。今、旅行中なので、なるべく早くと頼んだ。部品の在庫を訊いてもらったら、午後2時過ぎに届くというので、待つことになった。この前車検を受けたばかりなのに。ついてない。今日も砺波で泊まりか?
道の駅砺波で昼過ぎまで寝てすごす。(どうも興奮して寝付けない) そのあとジャスコでラーメン食って、ブログをアップ。
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コメント
みなさん、コメント、ありがとうございます。
「旅では何が起こるかわからない。だから面白い」などと、さんざん書いていたのに、悪いことが起こると、落ち込みます。しばらく経てば、バイクの一件も、楽しい思い出に変わることはわかるんですが。
少々疲れ気味。無理はしないようにします。九州から来た釣り人(28日のブログに書いてます)は、前後に車がいなかったら、時速30kmくらいで、のんびり風景を見ながら運転していますと言ってました。俺も初心に帰り、スピードも落とすようにしました。この2、3日いろいろとあったし。
投稿: あおやぎ | 2007/05/28 13:12
追伸;昨日のコメントが、あもんさんの名前になってしまっていました。ゴメンナサイ。KAN
投稿: KAN | 2007/05/28 06:48
写真を見てふと大理から麗江へ向かう途中と思ってしまいました。
カメリアホテルで一度お会いしたKANです。アドレスが変更になったままにしていて、また、自分の身辺にもいろいろあったりして・・・でも時々ブログ楽しんでいました!九州みえる前によかったら一報ください。車中泊よりましかも。
投稿: KAN | 2007/05/27 23:09
青柳さん。こんにちは。
毎日拝見させていただいています。
まるで自分も旅をしているような写真ばかり
タダ旅行させてもらってありがとうございました
ブログ引越ししました
ぜひ遊びにいきてください
スナフキンにあこがれて http://amon3838.exblog.jp/
ティーンに捧げる宝物 http://blog.goo.ne.jp/amon3838/
魁!日本代表 http://amon3838.blog106.fc2.com/
投稿: あもん | 2007/05/27 14:37
青柳さん。こんにちは。
毎日拝見させていただいています。
まるで自分も旅をしているような写真ばかり
タダ旅行させてもらってありがとうございました
ブログ引越ししました
ぜひ遊びにいきてください
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投稿: あもん | 2007/05/27 14:37
こんにちは。大変でしたね・・・
夜中にそんな場面に会ったら本当に怖いと思います。
何もなくてよかったです。旅の続き、がんばってください。
写真の風景にうっとりしました。
散居集落が何処までも続いていて、それに不思議な色・・・
お伽話の世界みたいです。
投稿: みゆき | 2007/05/26 18:11