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2007/06/07

2007初夏、車中泊の撮影旅(19) 嬉野、川棚、大瀬戸、愛野のジャガイモ畑、千々石の棚田,

070607
6月7日、木曜日、

昨日、鹿島から嬉野へ向かった話から。

嬉野町は嬉野温泉、茶で有名。嬉野の街中から、南へ3,4km下ったところから、長崎県の川棚に抜ける山道がある。

山に向かって進む谷沿いは、茶畑が多い。最後の集落に、国指定天然記念物である、「嬉野の大茶樹」がある。推定樹齢340年、高さ4m、枝張り8mの巨大な茶の木だ。「さが名木100選」にも選ばれている。

「茶の木」と「棚田」とくれば、雲南省のアイニ(ハニ)族。雲南省南部の西双版納州、アイニ族という少数民族が住んでいる山には、樹齢800年の茶の木があった。ここは日本でも有名なプアル茶を栽培している一地区だ。ここで採れた茶葉がプアルの町まで運ばれ、「プアル茶」として出荷される。

村の宿に泊まっていると、夕方、茶畑から茶の葉を摘んで戻ってきたアイニ族の人たちが、宿の前を通っていった。茶の葉を管理する事務所があり、彼らは葉の重さを量ってもらい、それを現金に換え、商店で生活必需品を買うのだった。

たしか、この中国「茶樹王」の座は、800年のこの木ではなくて、もっと古い木が思茅地区で発見されてから、こちらになったのではなかったかな。(ちょっと、あやふや情報ですが)

峠を越えると、そこは長崎県だ。川棚町の木場棚田へ降りていく。「百選」撮影以来なので、もう6年ぶりだ。ここで、田植作業休憩中のおじさんと話し込む。昔の話をいろいろしてくれた。この棚田も石垣がすばらしい。石は、このあたりから出てきたもの。石垣はほぼ垂直に築かれている。今もコンクリートではなくて、石垣のほうがいいというので、訳を尋ねると、石垣なら上り下りできるし便利だからという。

昔は牛を使っていたというので、このまえ「壬生花田植」で聞いた「牛は水を怖がって田んぼに入らないでしょう?」と聞いたら「そんなことなかったです」という。昔は子牛のときから田んぼで使っていたので、水には慣れていたのでは、という。

農道も広くなって、コンクリートにしたが、昔、葬式のとき、このあたりはまだ土葬だったので、細いあぜ道を棺おけを担いで墓まで運んだ。

「一時期、みかんも作りましたけんね。わたしも和歌山県に研修にいって、みかん栽培を習ってきました。そのあたりの山も、あの山の上にもみかんを作りました」今は、もう、うっそうとした林に返っている。

九州北部には、「浮立(ふりゅう)」という祭りがある。唐津市相知の蕨野では、一昨年、その浮立を見た。ここの浮立は、山を越えた嬉野の村との交流があったので、村人が嬉野で覚えてきたことなのだという。天気が悪い日なんかは、みんなで太鼓や鉦をならして踊りの練習をした。テレビもラジオもなかったので、唯一の楽しみが、浮立の練習だった。この村の浮立は、おじさんが中学生のころから始まったようだ。

おじさんは「写真は大切だ」という。「1年2年ではわからないが、20年30年たつと、こんなことをしていたんだなぁと、いろんなことがわかる」 言われるとおり、写真の「記録性」の価値を評価するのは、現在ではないということ。こういう山村に住んでいるから、とくに、周りの変化に敏感なのかもしれない。

おじさんは言った。「わたしの代で、何もかも大きく変わりましたけんね」 今まで何代にもわたって受け継いできた集落と棚田は、おじさんの代で、がらりと変化してしまった。「自分の代で田んぼを荒らしたくない」と考えている人が農家の中には多いと聞く。だから、もしかしたら後ろめたさのようなものが、おじさんにはあるのかも。だから「写真は大切だ」などという言葉も出たのかなぁ。でも、仕方ないよね。おじさんのせいではない。個人ではどうしようもない時代の変化なのだから。

木場棚田を降りていくと、県道4号線にぶつかり、左折すると、すぐに国道204号線に出る。それをハウステンボス方向へ。ショートカットをして、202号線に出た。「ちゃんぽん」の看板に誘われて、食堂に入る。長崎といえば、ちゃんぽん。それくらいしか思い浮かばない俺は、遠いところから来た人。九州はやっぱり遠い。

国道202号線の西海橋を渡る。景色がいい。2kmくらい行くと、国道202、206号線の交差点があるが、その真ん中、大瀬戸町への山越えの道があったので上っていく。20分ほどで、大瀬戸町に着いた。

ここに来たのは「柳の防風垣」を撮るためだ。ところが「柳」とは、木の名前ではなくて、集落名だとわかった。どうしても「柳を使った防風林」というのがわからなくて、役場(今は市役所の支所)にいって聞いた。

役場から4kmほど北へ行くと、柳集落があった。その上に上ると、みかんとびわの栽培地が広がっている。その木を風から守るために植えられた木が、垣根のようになっている。それが「防風垣」だった。働いていたおじいさんに聞いてわかった。そして、その防風垣で一番美しい(良い)と評価されたのが(何か賞をもらったといっていた)、柳集落のそれだったのだ。

確かに、高い緑の垣根になっているが、丁寧に剪定されていて、美しいといえば美しい。盆栽のpセンスのある人かもしれない。みかんやびわ栽培に素人の俺には「何だろう」という不思議さは感じる。これも、日本の農業景観のひとつだ。

写真を撮ったあと、町に戻り、商店で冷たい飲み物を買って、さらに南下すると、道の駅、夕日がみえる丘そとめ公園があった。夕日がきれいなのだろう。まだ午後4時だったが、今日はここ泊まりにする。今朝も早かったし。食べるところもあるし、売店もある。(温泉が近くになさそう。残念) なんと言っても、雄大な景色が気に入った。

そして今日、6月7日。道の駅、そとめ公園を出る。

国道202号線から一山越えて、大村湾のほうに出た。時津町から海沿いを走る国道207号線に入る。この道は国道だが、リアス式海岸をくねくね走る細い道だ。でも、風景はいい。海までの斜面が段々の石垣になっていて、みかんが栽培されている。

地図で見ると、鹿島という島だろうか、島全部がみかん畑になっているようだ。諫早市を経由して、国道57号線で愛野まで。ここのジャガイモ畑が文化的景観の候補地になっている。昨日の、大瀬戸町の「防風垣」もそうだが、正直、地味な被写体かなと思っていた。

ところが、実際その場所に足を運んでみると、いろんな発見はあるし、こんな光景があるのかぁとびっくりするのだ。やっぱり実際自分の目で確かめないと、わからないことが多い。情報は知ることができても、どんな「感じ」かは、現地でないとわからない。だから旅が面白い、ともいえる。

役場でジャガイモ畑を見渡す場所を聞いたら(こういうのは役場に聞かないとわからない。一般的な観光地ではないから)、教えられたのは、山の中腹に建つペンション「マイティーム」。国道251号線を長崎のほうに走った山側にある。役場から約20分。みかん畑の細い道を登っていくと、しゃれた感じのペンションにたどり着く。そこでジャガイモ畑の写真を撮りに来たことを言うと、オーナーは、快く部屋のベランダに上げてくれた。もちろんお客がいない部屋の、だけど。

それが雄大な風景。畑そのものは収穫が終わってしまい、今は、畑は茶色だが、右手には海、そして雲仙普賢岳の雄大な山をバックに、まるで棚田のようなひな壇に見えるジャガイモ畑も、またいい感じだ。そこを国道が走っているのもよく見える。

ペンションでコーヒーを頼み、少し話をした。このオーナーは福岡出身だが、ペンションを開きたくて土地を探していたところ、ここを見つけた。風景が気に入った。2002年のこと。なんとなく「隠れ家」的な雰囲気のあるペンションで、リピーターの人たちが多いという。(連絡先は、0957-36-3400 ホームページ http://www/mari-time.jp)

070607_1ところで、オーナーは、この前、雲仙の噴火によって犠牲になった人たちを慰霊する16回目の慰霊祭の日、雲仙普賢岳の溶岩ドームから妙な雲が上がっているのを見つけた。偶然にしては、不思議な風景だなぁと、普段は写真を撮らないが、このときだけはデジカメで写真に撮った。それを見せてくれた。確かに人工的な雲に見える。不思議な雲だ。慰霊祭ということを知らなければ見過ごしていた雲なのかもしれない。たとえば、慰霊祭について無知な俺が見たとしても、たぶん気がつかなかったのではないか。見えるか見えないか、その人の心と無関係ではないということか。

山を下り、国道251号線を東に走り、愛野に戻り、そこから国道57号線で、千々石へ。ここには棚田百選の岳棚田がある。初めて来たときはなかったが、今は、展望台ができている。展望台は、集落の中へ入る道ではなくて、雲仙温泉へ通じる県道沿いにある。

すごい。下からしか見たことがないから、岳棚田がこういうふうになっていたのかと、初めて知った。

そのまま雲仙温泉街まで上った。硫黄の匂い。湯煙が上がっていた。道を南にとり、北有馬町に出た。そこから国道251号線で、半島の南、口之津まで。ここからフェリーに乗って、天草に渡ろうと思う。着いたのは、午後1時20分。今度の便が出るのが午後2時15分というので、このブログをアップしておく。


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コメント

みゆきさん

遅くなりましたが、コメントありがとうございます。撮影旅行も終わりました。
愛野のジャガイモ畑は、意外におもしろかったですね。角度によっては、棚田に見えてしまいました。時期と、時間を合わせて、もう一度行ってみたいです。写真では見えませんが、後ろに雲仙岳がドーンとそびえているんです。迫力あります。ちょうどいい具合に、丘の上に教会のような建物が見えますが、これはドライブイン(みやげ物屋?)だそうです。でも、教会を意識して作ったのでしょう。
諫早付近の海もきれいでしたね。

投稿: あおやぎ | 2007/06/17 17:16

うわ~懐かしいです。
昔、諫早に住んでいたことがあって愛野までバイクで走ったりしました。
でも、上から見るとこんなに素敵なじゃがいも畑だったんですね。気付きませんでした。
ここでたくさんの素敵な風景を見れて嬉しいです。天草のお話も楽しみです。

投稿: みゆき | 2007/06/07 15:42

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