映画 『サン・ジャックへの道』を観て (2) 巡礼で身体感覚を回復
『サン・ジャックへの道』で監督・脚本を手掛けたコリーヌ・セローはインタビューでこう言っています。(公式サイトから)
「巡礼というのはまた、自分探しと同時にもうひとつの生活様式を発見する行為だと思います。この車社会のなかで自分の足だけを使って大自然のなかをひたすら歩く、とてもエコロジカルな行為で、それもわたしが興味を引かれた点です。甘やかされた人間たちがいきなり何もない大自然のなかに放り込まれたらどうなるか、現代社会の問題を浮き彫りにするのにぴったりだと思ったのです。」
日本では、もともと巡礼は修行の一種で、即身成仏を果たすという仏教思想からきていて、ある祈願を持って定まった場所を定まった経路で参拝するというものでした。
たとえば、四国八十八ヵ所霊場を巡ったことはまだありませんが、巡礼というのは過程が大切なのだと言えます。1ヶ所では1日で終わってしまいますが、88ヶ所あれば、ある日数が必要になります。その期間、自分の生活をじっくりと振り返り、人生や幸福について考えながら歩く。そういうことを考えるには、88ヶ所くらいがちょうどいい数なのかもしれません。(もちろん「歩き」での巡礼の場合ですが)
巡礼は、移り変わる景色を見て、いろんな人間に出会うことで、脳は刺激を受け、しかも自分の足で歩くわけだから、体も丈夫になるはずです。巡礼というと、宗教的な、精神的な面がイメージされますが、もっと身体的な面も大きいのではないかと思います。
ヨーロッパでも、日本でも、巡礼の歩き旅がブームになっているのは、身体感覚を忘れてしまったことに対する危機感があり、だからそれを回復したいということがあるのかもしれません。コリーヌ・セロー監督の言っている「現代社会の問題」ですね。
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