映画 『イン・ディス・ワールド IN THIS WORLD』を観て (2)
(写真はトルコ・イスタンブール)
監督は、世界中の難民を代表させる形で、アフガン難民を取り上げ、作品にしました。難民の現状を訴えたかったのだといいます。
トラック荷台の中や、イランからトルコに抜ける山越えのシーンでは、わずかな光で登場人物を照らし、コマ送りのような画面もあり、はっきり言って見づらいし、クルクル動く光で、目が回りそうになり、吐き気さえ覚えました。でも、この感覚が、この難民たちの感覚そのものなのかもしれません。
どこへ行くかもわからない、なぜ、ここにいるかもわからない。いつ抜けられるかわからない長いトンネル・・・。彼ら難民の気持ちを象徴しているのではないでしょうか。
ただ、監督は真面目なのか、あまりにも「難民の厳しい現実」にこだわったせいか、気の抜ける部分が少なかったかなと思います。
唯一、イランとトルコ国境の、たぶん、クルド族の村でしょうか、みんな親切にしてくれて、彼らふたりも村に溶けこんでサッカーを楽しむシーンには、ホッとしましたが。
主役のジャマールは、実際のアフガン難民であることは、昨日も触れましたが、なんと、映画撮影終了後、彼は、実際にパキスタンから再びロンドンまで密航して難民申請をしたそうです。
「事実」をもとにして「映画」が作られることは多いでしょうが、これは、「映画」が「事実」になってしまったということです。ただ、ジャマールの難民申請は却下され、18歳の誕生日の前日にはイギリスを出なくてはならないそうです。またパキスタンに帰されてしまう(しまった)のでしょうか。
映画によって人生が変わるという話は聞きますが、ジャマールの場合は、文字通り、直接変わりました。しかも自分の役に影響を受けて。この話も印象的です。
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