





車中泊で使っている車はワンボックスカーで、3列シートがあり、すべて倒すとフラットになる。しかし、そのままだと、まだ椅子には凹凸があるので寝るには厳しい。そこでコンパネ(コンクリートパネル)を敷くことにした。
コンパネ2枚を購入し切断してもらった。120センチ×90センチを2枚作る。そのうちの1枚をさらに半分に。だから120センチ×90センチのが1枚と、90センチ×60センチのが2枚できる。120センチというのは、車体内装の幅だ。あとはセミダブルのマットを敷いた。それでも下の方に隙間が出来るので、バスタオルなどを詰めて、なるべく動かないようにした。
日中は、90センチ×60センチの2枚を取り外せば、中の座席は座席として使うことができる。結果的には、2枚にしたのは正解だった。というのも、120センチ×90センチの1枚だと、外しても収納する場所がないし、小さいほうが扱いやすい。
ヴィーノの居場所はどこにするか。助手席しかない。助手席にコンパネの余った部分を敷いて、その周り、ケージのように網を立てかけ、針金でシートと固定した。そこにヴィーノお気に入りの臭い毛布を敷けば「玉座」が完成だ。
コンパネを敷いた後ろ座席の一番はしにカラーボックスを横に置いて、食器や調味料を入れておく棚にすることにした。後ろのハッチを開けると、ちょうどいい高さになる。
料理用にアルミ製のコッヘル(鍋)のセット。皿、カップ、茶碗、まな板、包丁、ざる、お玉、箸、スプーン、ホーローびきのフライパン、カセット・ガスコンロ、風除けのためのアルミ。アルミ箔、キッチンペーパーなどなど。調味料は、醤油、塩、油、コンソメ、和風だし、胡椒、チューブに入ったバター。無洗米五キロ袋、ドッグフードなどなど。
車が家であり、仕事場であり、思考する場所になる。まるで「ハーミット・クラブ(Hermit crab)」だ。「ハーミット・クラブ」とは英語で「ヤドカリ」という意味。
車中泊の魅力は、なんと言っても、この自由さ。日が昇れば移動を始め、日が暮れるころには車を停めて眠る。シンプルな生活。
職業柄、写真を撮る場所は田舎が多いので、街に泊まっていては、いい写真を撮るチャンスを逃してしまう。被写体の近くで泊まっていれば、翌朝は、すぐ撮影できるというメリットがある。そう思って車中泊の旅を始めたのは、日本の棚田を撮影するようになった10年前だ。
でも、そんな仕事上のメリットなどは、後から付け足した言い訳みたいなもので、本音を言えば、宿を予約する必要もない車中泊の自由さ、気ままさが気に入っている。
それは、俺が若いころから続けてきた、「外国を旅するときはバックパッカーで」という旅のスタイルと共通する感覚がある。なるべく少ない荷物で旅をすること。
それともうひとつ、経済的な理由も大きい。宿にお金をかけることに、あまり価値を見出せない。旅の目的がそもそも違うのだ。宿に泊まってリラックスすることではなくて、なるべくいろんなところを見たいという旅。そんな旅にはお勧めの方法が車中泊という方法なのだ。(犬連れ、ペット連れなら、なおさら)
ただ、そんな自由な車中泊の旅だが、実はヤドカリも矛盾を抱えながら生きている。大きな家を持つほど、重たくて移動しにくくなる、ということ。快適さを追求すればするほど、不快になっていくという矛盾だ。この車中泊の旅も同じようなところがある。
車を大きくしたり、持ち物を増やせば快適になるかというと、そうでもない。要はバランスか? そのバランスは、その人の旅の目的によって変わってくると思う。
ちなみに、ヤドカリの「Hermit crab」のHermitとは、「隠者」のことで、小さな洞穴に1人で生活する「隠者」のイメージからついた名前らしいが、また「隠者」とは「元放浪者」でもあるという。ますます俺の旅を暗示するような言葉である。
『妻と犬連れ日本一周、車中泊の旅』が、Kindle(キンドル・ダイレクト・パブリッシング)から出版されました。
内容は、2009年から2010年にかけて約1年間、北は北海道から南は沖縄まで、妻とヴィーノを連れて全国すべての都道府県をまわった車中泊旅の旅行記です。ようやく書きあげました。文字数は約115000字(400字詰め原稿用紙290枚分)あります。
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なお、Kindleがなくても、Kindle無料アプリで読むことができます。(スマートフォン iPhone & iPod touch Android & タブレットPC iPad Android)
【目次】:
序章
第一章 遊牧民の旅を思いつく
第二章 旅立ち 東北の旅
第三章 北海道の旅
第四章 東海北陸の旅
第五章 犬嫌いになったわけ
第六章 四国・近畿の旅
第七章 中国・九州の旅
第八章 沖縄の旅
終章
【あらすじ】:
51歳の男(私)。40歳の女(妻)。2歳のやんちゃなビーグル犬ヴィーノ。
偶然いっしょに暮らしはじめることになった血も種も越えた、2人と1匹の家族が1台の車に世帯道具を積み込み、車中泊しながら北海道から沖縄まで、全都道府県を旅した旅行記。総走行距離は約2万7千キロメートルになった。
もともと犬とは相性がよくない私は、中国で犬に咬まれて犬嫌いになったが、皮肉にも、妻の希望で犬と暮らすことになる。中国のカザフ族やモンゴル族の遊牧民の生活を見てから、彼らのような移動生活にあこがれていた私は、遊牧民的な旅をしてみたいと夢見ていた。ネットさえつながれば仕事ができるようになった今こそ、「新遊牧民」を実行できるチャンスと思い、妻と犬を連れて日本一周の車旅をすることにした。
やってどうなるか? どんな意味があるのか? 考えはじめるときりがない。それで、とにかく出ることにした。出てから考えようということだ。衝動的で無謀な計画だったかもしれない。
都道府県をすべてまわるということ以外、はっきりした目的地もなく、その日その日、行きあたりばったりの旅をした。当日の朝、地図を見て、おもしろそうなところへ行ってみる。夕方になったら温泉を探し、スーパーで買い物し、食事を作り、車の中で寝る…。3頭の「群れ(家族)」が移動するシンプルな生活。遊牧民と同じで、少ない装備でも長期の旅ができることがわかった。
移動する生活そのものがわくわくする。何を見るでもなく、何か名物を食べるでもないのに、なぜか楽しい。それはまさにカザフ族の生活で見つけた気持ちよさだった。
もちろんトラブルもたくさんあった。
「犬と暮らす」ということは、私たちにとってどういうことなのか、考えながらの旅になった。犬を通して日本を見る旅でもあった。
また、こういった車中泊の車旅をしている人たちが意外に多いことにも気がついた。とくに定年退職した年配の人たち。その数がだんだん増えているという日本の現状も知る旅になった。
そして、旅の最終ゴールは・ ・ ・。

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こちらは『写真絵本:日本一周犬ヴィーノが見た風景』です。
この本は、ヴィーノの目線で日本の風景をとらえた写真絵本です。ヴィーノといっしょに美しい風景を旅した気分を味わってもらえたらうれしいです。 なお、写真は127点使用しています。
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車中泊で日本一周した犬連れ旅の写真が、「週刊朝日」の後ろのグラビアに6ページで掲載されています。(2010/10/5)
『犬と旅』の「週刊朝日」 2010年10月8日号発売中
2014年用卓上カレンダー『犬旅 日本一周』
ブログ「ヴィーノの日本さすらい旅」
スライドショー「犬連れ日本一周の旅 北海道篇」(YouTube)
スライドショー「犬連れ日本一周の旅 東北・関東・甲信篇」(YouTube)


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