映画 『パラダイス・ナウ』
考えてみると、「慣れ」とは恐ろしいものです。
「自爆テロが起きた」というニュースを聞いて、「またかぁ」と思うのはまだましで、世界中が、もう慣れっ子になって気にもとめなくなっている、無関心になっているとしたら、これも恐ろしいことに違いありません。先日も、アフガニスタンの首都カブールでテロがありました。
でも、それだったら自爆テロの意味はほとんど無いのではないか。それでもやってしまう。どうしてなのでしょうか。
そのヒントになりそうなものが、この映画『パラダイス・ナウ』にはありました。
『パラダイス・ナウ』
監督 : ハニ・アブ・アサド
出演 : カイス・ネシフ、アリ・スリマン、ルブナ・アザバル、アメル・レヘル など
パレスチナ人側からパレスチナ問題を描いている、05年のフランス・ドイツ・オランダ・パレスチナ合作映画です。実際の銃撃戦の中で撮影されたとのこと。05年ベルリン国際映画祭での「青い天使賞」、「ヨーロッパ映画賞脚本部門」、06年の「ゴールデングローブ賞外国語映画部門」など、多くの賞を受賞して、国際的にも高い評価をうけた映画です。
イスラエル占領地のヨルダン川西岸地区。自爆テロ攻撃の実行者に選ばれた幼なじみのサイードとハーレド。志願していたとは言え、あまりにも急な決行命令にそれほど動揺したふうでもなく・・・。
ただ、あとでそうでもないとわかりましたが。当然でしょう。テロリストだって普通の人間です。迷いもあれば、恐れもあります。
自爆テロを決行するために、ふたりは幹部に案内されてイスラエル側とのフェンスへ向かいますが、アクシデントが起こり、失敗します。そして2度目のトライ。でも、そのとき、ふたりには、「変化」が起きています。そして別々の行動を取ることになったのですが、そのふたりの別々の行動こそ、パレスチナ人個人個人の心の葛藤を表わしているように感じました。
登場人物たちの印象的な台詞から(記憶で書いているので、正確な言い回しではありませんが)。
パラダイスは、頭の中にあるだけ。
軍事的には何をやってもイスラエルが強い、だから、俺たちにできるのは、自爆テロしかないんだ。
でも、テロをやったら、イスラエル側に「殺す理由」を与えてしまう。復讐は復讐を生むだけ。モラルの戦いをやらなければ。
イスラエルに、モラルなどあるのか?
占領されているのは、死んだも同じ。これしか方法はないのだ。一人でも多くのイスラエル人を巻き添えにできれば。
自爆テロではなく、別な方法もあるはずだ。
別な方法があるかもしれないが、それは別な人がやればいい。俺は自爆テロをやる。
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