東日本大震災の現場 (8) 石巻の日和山公園 「瓦礫は過去、桜は未来」
ボランティアを終わった翌日(4月25日)、初めて被災地を目の当たりにした。日和山公園からは、瓦礫の原と化した石巻の被災地が広がっていた。そして桜が満開だった。ここ数日、桜の時期であることを忘れていた。
写真を撮っていると、ひとりのおじさんがカメラを持ってやってきた。
「すごいですね。桜、やっぱり満開ですね」
と声をかけてきた。避難所で暮らしている人だった。
おじさんの家は、この瓦礫の中にある。いや、かつて、あった。地震で壊れた家はほとんどなかった。すべては津波に持っていかれた。そして夜は、日和山にぶつかった車からガソリンがもれて火事になった。火は山の上にまでは来なかった。だから桜の木は残った。
「今が、どん底です。あっちの瓦礫の方は過去、こっちの桜の方は未来かな。このコントラストは今の石巻の象徴じゃないでしょうか。そう思って、桜の写真を撮りにきました」
そう言うと、カメラを構えてシャッターを押した。
「いつまでも被災者に甘んじていることはできません。自立しなければ。必ず復興できます。ただ、時間はかかる。この瓦礫をどかしたあと更地にします。でも、地盤沈下しているので、土地をかさ上げするのかどうか。元に戻るには10年20年の話じゃないと思いますが」
この大災害の中で、桜の明るい色が目に痛かった。
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