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2011/05/28

近々未来予想ショートストーリー 『暑がりません、秋までは』

110528(写真は龍脊棚田)

中国の広西チワン族自治区と貴州省へ行ってきます。そのためブログ、ツイッターはしばらく休みです。コメントもお返しできません。ご了承ください。なおブログは、6月10日ころ再開します。

その代わりというのもなんですが、ショートストーリーをひとつ書いて出ます。

                 ☆


 『暑がりません、秋までは』 (近々未来予想ショートストーリー)


2011年7月28日。

その日、午前中から30度を越え、午後2時には38度の猛暑日になった。

扇風機では我慢できず俺はエアコンをつけた。天国からの風だ。これで生き返ると思った。

そのとき表から声がした。

「この家の人、出てきなさい!」

玄関の戸を開けると、緑色の腕章を付けた10数人のおじさん、おばさんが立っていて、ぎょっとした。なぜぎょっとしたかというと、おじさんたちは海パン、おばさんたちはビキニだったからだ。

そのうちのひとり、拡声器を持ったメガネをかけたおばさんが、「エアコンは切ってください!」と俺に向かって叫んだ。

「なんですか、あなたたちは?」

「私たちは、節電組の者です。みんなが節電に励んでいるとき、あなたはなんですか? エアコンなど使って。恥ずかしくないんですか?」

額に青筋を立てたおじさんは、

「節電しない人は非国民ですよ、あなた」

改めてよく見たら、彼らは幟を掲げていて、それには、

「暑がりません、秋までは」 「エアコンは国民の敵だ」

などと書いてある。

「私たち節電組は、住宅街を回って、節電の啓蒙をしているんです」

「とくにエアコンを使っている人たちに。室外機が動いていれば、使っているのがすぐわかりますよ」

そのとき、ひとりの若い女性が通りかかった。そして彼女は節電組のおばさんたちに捕まった。

「あなたスカートの丈が長すぎます。ダメじゃないですか。これじゃぁ暑すぎるでしょ」

「自己批判しなさい。『私は長いスカートを履いた愚か者です』と」

若い女性は、「いやです」と答えた。すると、

おばさんたちはスカートを無理やり脱がせてしまった。スカートを脱がされた女性は、泣きながら走っていった。

「ひどくないですか? そこまでやらなくても」と俺は抗議した。

「何を言っているんですか、この非常時に。あなたたちのような人がいるからダメなんです」とメガネのおばさんはいった。

「あなたのズボンも脱がしますよ」と青筋立てたおじさんはいった。

彼らは額から汗を滴らせながらも、顔には自信がみなぎっていた。反論できるような雰囲気ではなかった。いや正直な話、俺はそのとき恐怖を感じた。それで俺は、

「わかりました。すぐ消します」

といって家の中に入りエアコンを切った。カーテンの陰から見ると、表の集団は、みんな満足げな顔をして、3丁目の方へ歩いていった。

その夜、俺は自己嫌悪に陥った。なんて情けないやつなんだろう、俺は。あんなやつらに屈してしまうとは。

それから俺はネットでこんな商品が闇で売られているのを知った。勇気がわいてきた。すぐに注文した。

「音がしない室外機。これで思う存分エアコンを使うことができる。同士よ、立ち上がれ! 反節電レジスタンス一同」

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