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2011/08/23

楽しめない映画 『リターン・トゥ・パラダイス』を観て (ネタバレ注意)

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『リターン・トゥ・パラダイス』(Return to Paradise) 1998年公開のアメリカ映画。

監督: ジョセフ・ルーベン
出演者: ヴィンス・ヴォーン、アン・ヘッシュ、ホアキン・フェニックス

これほど楽しめない映画を観たのは久しぶりです。昔観た『ミッドナイト・エクスプレス』以来です。

「楽しめない」というのは、「映画が面白くない」という意味ではありません。とにかくドキドキしてしまって、「映画」を気楽に「娯楽」として楽しめないということなのです。逆に言うと、それだけリアリティがあってすごい映画だ、とも言えるわけですが。

日本では劇場公開されていないようです。そうかもしれません。日本でヒットするとも思わないし、話題になることもないでしょう。こういった話は。でも少なくとも外国へ旅した、特にアジアへ旅したことがある人には、この恐怖がわかるだろうと思います。

これはマレーシアのビーチで羽目を外したアメリカ人青年3人のうち、2人は帰国するのですが、残ったひとりが、麻薬の密売容疑で逮捕され、あと8日で絞首刑になってしまうということが、2年後に突然知らされるのです。見つかった麻薬は3人で使用したものなので、アメリカに戻ったふたりにもその責任はあると、捕まっている青年の弁護士から説得されます。

ふたりが、彼を救うために、マレーシアに戻り自首すれば、絞首刑は回避できる。そのかわり自分たちも3年服役しなければならない。友人を助けるためにマレーシアに戻るかどうか。ふたりの葛藤は続きます。

最終的にふたりはマレーシアに戻るのですが、裁判での判決は覆りませんでした。なんとも救いのない話なのですが、裁判長はマレーシアの司法制度を批判したアメリカの新聞記事を手にして言うのです。

「西欧人は麻薬に対する我々の態度が理解できない。でも、理解できないのは我々のほうだ。あなた方の都会は腐り、若者は魂を失った。だかこそ厳しい法律が治安維持には必要なのだ」

俺も西欧的価値観の中で生きているので、麻薬使用だけで死刑は厳しすぎると感じますが、それがいいのかどうかは別にしても、もうひとつ、裁判長の言葉にある共感できる怒りを感じます。

それは、2002年10月に起きたバリ島爆弾テロのときに聞いた話を思い出させました。そのテロでは主にオーストラリア人が犠牲になっています。俺もバリ島にいて、現地の人間からこんな話を聞いたのでした。

アジアの各地で見受けられる、何をやっても許されていると思っているような、欧米人旅行者たち。ひどいのは、イスラム教徒の前で酒を飲んだり、裸になったり、麻薬をやったりという傍若無人な一部欧米人に対する、現地の慣習や文化を無視した態度に対する激しい怒りです。

自分の主張を一方的に暴力に訴えるテロは許されるはずはありませんが、そのテロが起きる原因は、どこかにあるのです。でもそれに気がつくには、少数派の方から見てみないとわからないこともあるんだと思います。

今の世界の混乱は、現地のやり方を軽視した欧米的価値観の押し付け、という面があるのは間違いないでしょう。

そんなことまで考えてしまいました。

Ya_2「2002年 バリ島爆弾テロ」

映画とは関係ありませんが、こんなニュースが飛び込んできました。

マレーシア 日本人男性殺害か
NHK NEWS WEB http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110823/k10015093251000.html

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