


(写真上から、1年前と変わらない津波の現場、小高神社境内の桜、灯篭など倒れたままの小高神社としだれ桜、小高中学のグランドの桜)
南相馬市の原町から数km南下する。以前検問があった場所にパトカーはいたが、止められることはない。小高地区は16日から警戒区域解除になった。
市街地に入り橋を渡って小高神社へ行った。鳥居や灯篭など壊れたままだ。敷地内は桜が満開だった。しだれ桜が立派。
時々地元の人がやってくる。携帯で桜の写真を撮る夫婦に声をかけた。郡山の仮設住宅からやってきた。家にいっても電気がまだ来ていないので(23日には通じるらしい)掃除ができない。それで桜を見にやってきた。今年も咲いてるなぁと感慨深げだ。
そのあともちらほらと地元の人がやってくる。ブルーシートを敷いてどんちゃん騒ぎをするでもなく、10分間くらい静かに桜を眺め、携帯で写真を撮る。これが被災者の今年の「花見」だ。
メイン通りに出たら、角の家の主人が声をかけてきた。
「これは監視カメラですかね?」
見ると、電柱の上に箱型の物が設置されている。駅方向の通りを向いている。それが電線とつながって、下の電源の箱らしい物とつながっている。
「以前はなかったのに。新しくつけたんだね」
「治安が悪いからでしょうか? これで安心じゃないですか?」
「うちには金目のものはないから」
泥棒が多いそうだ。津波の場所とは違って、家はなくなっていないし、財産はそのまま残っている家が多い。仮設には運びきれない。置く場所がないのだ。彼らも原町の仮設から通っているそうだ。
店の天井が落ちてしまったので、今日、大工さんに来てもらって、修理の見積もりを出してもらうのだという。
小高神社や川沿いの堤防は、毎年花見客で賑わった。奥さんは川側に向いた窓から、あぁもう咲き始めたな、7分咲きだな、というふうに桜の咲く様子を見るのが楽しみだった。着物を着た踊りの行列が堤防を歩いたりもした。
中学校、高校がある高台へ行った。
桜がきれいに咲いていた。もちろん学校は閉まったままだが、時々、車でやってきて、写真を撮っていく。とくに若い人が多い。卒業生ではないだろうか。
ある奥さんに声をかけた。彼女の息子さんはこの高校を卒業してしまったが、写真を撮って息子さんに送ってあげるとのこと。
彼女はここが警戒区域だった1年のうち、3回だけ、一時帰宅した。事業主などは、もっと多く帰宅できた。
彼女は、これから除染作業者がたくさん入ることで、治安が大丈夫なのか、という心配をしている。
「一応、暴力団は入れないとは言っているけど、末端の作業員はどうかわからない。中には悪い人もいるでしょう。夜、空き巣に入るかもしれない。作業員を疑って悪いけど」
これが本音。放射能の心配だけではない。そもそも原発事故がなかったら、盗難の心配までする必要がなかった。
住民の間では、そういうことが心配されている。これは当事者でないとなかなかわからないことだ。
「もし合併前(鹿島、原町、小高がいっしょになって南相馬市ができた)なら、小高町独自でもっといろんなこと進められたんでしょうが、今は、南相馬市の小高区ということで、なかなかきめ細かな配慮がたりません」

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