東日本大震災の現場 (28) 福島県南相馬市 新田川の桜並木で聞いた話
南相馬の新田川沿いの堤防には桜並木があった。この前、道の駅の桜で夕方会ったおばさんが、津波の後、馬の死体があがったといっていた場所だ。
桜は8分咲きといったところだが、こちらも妙に新しく感じる。地面が白土だからだ。もしかしたらこれも除染のあとか?と思って、散歩中のおじさんに聞いたら、やっぱり、この場所も除染したので、芝生が全部はがされたのだという。
「自然災害はしかたないけど、原発は別だから」
「国の原発政策、はっきりしないから困る。除染で取り除いた土の保管場所も決まっていない。自宅から出た土も自宅で保管するしかない。敷地内の端っこにおいてあるよ」
「よくテレビで、一時帰宅者の映像流れるが、白い防護服、あれはイメージが悪い。あれをテレビで見たら、だれも福島県のコメや野菜を買う気にはならなくなるだろ? 規則で着なくてはならないんだろうが、ほとんど意味のない場所もある。こういうイメージが風評被害を作っている」
「花見はほとんどしない。子どもがいないから。子どもといっしょに花見ができないのはさびしい。シーンとしている。俺たちの年代はいいが、やっぱり子どもたちは心配なので、なかなかここには帰ってこない」
おじさんは淡々と話をしたあと、また並木を歩いていった。
ところで、小高地区は警戒区域解除されて自由に出入りできるようになったが、まだ宿泊は認められていない。でも、「車に泊まった」とか「寝てない」というと、それですんでしまうらしい。建前と本音だ。
もうひとつ、建前と本音を聞いた。
それは小高では、自宅を掃除して出た汚水は、下水に流さず、保管するようにといわれているらしい。でも、自宅敷地にまけば関係ない。
役人は「建前」を言うしかない。それも住民はちゃんとわかっている。「本音」の部分が認められるなら、「建前」なんか怖くはないだろう。
でも「建前」の部分で、白い防護服を着ていたとしたら? イメージは大切だ。
風評被害を誰が作っているのか、この話を聞いてわかった。
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