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2012/09/28

映画 『天地明察』 ----- 改暦がどれほど大切だったかがわかる映画

120928(新潟県十日町市星峠の棚田と星の軌跡)

映画 『天地明察』を観てきました。【ネタバレ注意】

公式サイトはこちら
http://www.tenchi-meisatsu.jp/index.html

偶然にも今、旧暦カレンダーを作っているので、これはぜひ観ておかねばと思ったからです。

原作の冲方丁著『天地明察』はまだ読んでいないので、そのうちぜひ読んでみたい。映画は原作とは違ったところもあるだろうし。

映画は面白かったですよ。とくに全国を周る「北極出地(北極星の高度を測って、その土地の位置を知る)」の旅と、命がけの改暦の仕事。

幕府の碁方(碁の先生役)であった主人公の安井算哲が命を受けて、「北極出地」の日本全国を旅するようになります。これが算哲が改暦の責任者に抜擢されるきっかけだったのですが、こんな旅がしてみたいと俺も思います。全国の棚田を周ることも、何か通じるものを感じてジーンとしてしまいました。(伊能忠敬の旅にもあこがれます)

算哲は天文学に興味を持ち、数学も得意で、碁方という役職がら、京都と江戸を行き来して、著名な学者たちとも交流がありました。こんな算哲が改暦の大事業を行うことは、天命だったのでしょう。

当時は「宣明暦」「大統暦」「授時暦」などがありましたが、そのなかで算哲は中国の元王朝が採用した「授時暦」が一番正確だと思いながら研究を続けました。でも、これもわずかにずれていて、日食を外してしまい、挫折します。そこから何とか立ち直って、ふたたび日本独自の暦作りに挑みます。

そしてとうとう、日本と中国の緯度を考慮することで、もっと正確な「大和暦」を完成させます。

最初は採用されませんでしたが、世間の評判を取り、ついには採用されたのでした。それは「貞享暦」と命名されました。

算哲は幕府の天文方に任命され、それからは渋川春海と呼ばれるようになりました。

映画の中で、算哲の「暦は、天と人との約束。人と人との約束」というセリフがあったように思います。その通りなのです。暦が正確であることは、人心の安定につながり、社会の安定につながっているのでした。安定の根拠となるのが、天の動きであり、その動きを正確に把握して暦を作る人間のみが、一般人に安定を約束できる。だから暦を作ることは幕府にとっての大事業だったのです。

もちろん今でも(日本では西洋暦/グレゴリオ暦ですが)、暦(カレンダー)は大切です。暦は人の生活を支配しています。暦によってライフスタイルは大きく変わるのは、昔も今も同じです。

日ごろ俺たちは何気なく暦を使っていますが、これが突然無くなったら、あるいは、違ったものになったらと想像してみてください。大混乱です。暦は空気と同じように普段は意識されませんが、とても大切な決まりごとなのです。

ところで、またマニアックな話題をひとつ。

「北極出地」のシーンで、富士山が見える小田原が出てくるのですが、北極星の計測器を設置した石垣の城は、たぶん、ロケ地が兵庫県朝来市の「竹田城」ではないでしょうか。「天空の城」と呼ばれている城跡です。もちろんここから富士山は見えないので、合成ですが。
 
 
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コメント

すててこどんどんさん

映画、よかったですよねぇ。

昔から日本人は研究熱心だったんですね。安井算哲が、今も物作りに励んでいる中小企業の技術屋さんたちとだぶって見えました。

明治6年に新歴(西洋暦)が採用されてから、日本人の生活は激変しました。伝統的な行事は、新暦に直されてしまって、その心を半分無くしてしまった部分もあるようです。

中国での少数民族の祭りは、今も農暦(旧暦)で行われているし、月の写真を撮る機会も多いので、一般的な日本人よりも、まだ旧暦になじみのある生活を送っていると自負しています。

「自負しています」なんて書きましたが、要するにそれは時代遅れとも言われるかもしれません。

日本が新暦を取り入れて西洋文化を吸収したことは、日本の近代化に大きく貢献したことはもちろん認めますが、ここまで発展してしまうと、今度は失ったものの方が多かったのではないか、と今は疑問を感じています。

すててこどんどんさんの疑問は、だから俺もよくわかります。

ぜひ、来年は旧暦カレンダーを使っていただけるとありがたいです。

投稿: あおやぎ | 2012/09/29 00:03

青柳さん

僕も今日見て来たところだったんです。
映画はとても良かったです。熱が伝わりました。

僕はこの映画がきっかけに普段から、気になっていたことが吹き出しました。

それは今の日本では、伝統行事が新暦によって行われている不条理のようなものです。
伝統芸能に携わるものとしても当然感じることでしょう。
どう考えてもおかしいです。
この日に行う、というのは算哲さんが命を掛けたものです。

しかし、例えばお盆(盂蘭盆会)は、旧暦の7月15日に行わなくてはいけませんのに、今は新暦の8月15日と、勝手に固定していまいました。
旧暦の7月15日は、新暦の8月15日ではありません(ほとんどが)。
なのにこの日をお盆と決めて、霊が帰ってくるとした(帰って来られません。日が違います)。
しかも、関東では新暦の7月15日に行っている所もある。
どうなっているのか、算哲さんもびっくりするでしょうね。
他の行事もしかりです。

映画から飛んで、現在の姿に僕は疑問を感じました。
年をとりましたかね。

投稿: すててこどんどん | 2012/09/28 22:00

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