俺たちは危うい時代に生きている (1000隻の漁船が尖閣を攻めてくるというイメージ)
今回の尖閣に対する反日デモは、一応収束に向かっているようです。
毛沢東の肖像画まで出てきて、「反日」が「反政府」の様相を帯びてきて、中国政府にとっても、これ以上のデモ拡大は危険だと思い始めたようです。だから、中国監視船が日本の接続水域にいるのは、日本に圧力をかけるためという表向きの理由のほかに、日本の領海を侵犯しないように中国漁船を監視しているという意味合いもあるらしい。
今回のことで、もしかしたら戦争に・・・などと思った人は多いのではないでしょうか。まぁ、戦争は遠い世界の話で、日本には関係ないと、たかをくくっていた平和ボケ日本人にとって、シリアでの内戦やイラクでの爆破テロも、もっと身近に感じられるようになるかもしれません。
「戦争は起こりえる」と思っていたほうが、「戦争は起こしにくい」と俺は思います。
一番緊張が高まった日、1000隻の漁船が尖閣を目指す、という報道があり、実際何隻もの漁船の船出シーンが流れました。専門家たちでさえ、1000隻が攻めてきたらどうするんだ、みたいなことを言いだし、あの映像を見ると、まるでほんとうに大量の漁船が日本に襲ってくるようなイメージが作られました。
ところが、あのシーンは、東シナ海の禁漁期間終了を受けて、いっせいに船出する漁船団で、毎年のことらしいのです。
「尖閣諸島がある沖縄県石垣市。八重山漁協の上原亀一組合長(50)は中国の浙江省と福建省から出航する漁船群の映像に対し、「中国漁船が攻めて来るかのようなイメージを流すのは、日中ともにやめてもらいたい」と苦々しげに語った。」 (2012/9/18 朝日新聞東京判夕刊 11頁)
同じ映像でも、「1000隻の漁船が尖閣に攻めてくる」という説明か、「1000隻の漁船が待ちに待った漁が解禁されて意気揚々と船出した」という説明では、受け取るイメージは180度違ったものになります。ただし、中国政府も、この1000隻を利用して、日本に圧力をかけているという面は否定できませんが。
そういえば、関東大震災の時、事実無根の噂を信じた人たちが、次々に無辜の朝鮮人を虐殺した事件がありました。あれも、背景には日ごろ日本人たちが朝鮮人から恨まれていると思っていたことがあります。その思い込みが「朝鮮人が襲ってくる」というデマを生み出しました。この1000隻の船出シーンにも、それと通じる怖さを感じます。
連日の反日でデモを見続けてきた日本人には、「中国人は野蛮で危険な人たちだ」というイメージが植えつけられた時に、この船出シーンを見せられると、どうしても、「襲ってくる」という意味に受け取とりやすい状況にはなりました。そんな精神状態になっていたときに、もし中国人が本当に尖閣に上陸したら、どうなったことでしょう。
戦争は意外とちょっとしたことで起きてしまうのではないでしょうか。もともとの原因は、中国が尖閣を日本の領土として認めないことですが、実際に戦争になるきっかけは、そういう大きな理由とは違っているのかもしれません。日ごろからの中国人の反日感情と、日本人の中国人嫌いの感情が、背景にあります。
どういうことで戦争が起こるのか、身近なところでシュミレーションしておくことが、戦争を起こさないことでもあるように感じました。
まずは「相互不信」をどうやってなくしていくか。何度も中国へ行っているし、中国人の知人友人もいますが、それでも難しい問題だと俺も自覚しています。
ましてや、中国人と接したことも無く、ただイメージだけの「中国人」を相手に強気発言をしている一部の人たちは気をつけないといけません。
こういう人たちは「愛国」を名乗ってはいますが、実のところ日本の社会を嫌っている人たちであるかもしれません。自分の不満を、外国人に向ける。けっきょく、反日デモの暴徒と何も変わらない。変わらないどころか、両者は一番の「お友だち」になれると思いますよ。
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