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2012/10/08

ドラマ 『ザ・パシフィック THE PACIFIC』 をDVDで観て----人間性がそぎ落とされて「道具」になる

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121008_2(↑: 沖縄県辺戸岬   ↓:満座毛)

このドラマも、感想を書くのがむずかしい。最近そんなDVDばかり観ているような気がしますが。俺には面白かったです。【ネタバレ注意】

「WOWOW ザ・パシフィック」

第二次世界大戦の太平洋戦線を舞台に、日本軍と戦ったアメリカ海兵隊員たちの物語です。5巻10話で完結ですが、最後、実際の名前と顔写真も出てきたので、これが実話にもとづいたドラマであることがわかりました。

「ユージーン・B・スレッジのノンフィクション 『ペリリュー・沖縄戦記』(講談社学術文庫)、ロバート・レッキーの回想記『Helmet for My Pillow』等、元海兵隊員の著書や退役軍人へのインタビューを基にしている。」(WOWOW ザ・パシフィックより

とにかく、すさまじいの一言です。半分くらいは戦闘シーンなのではないでしょうか。来る日も来る日も、泥や糞や死体にまみれながら地面を這いつくばり、いつ襲ってくるかわからない日本兵の銃撃におびえながら、眠れない夜を過ごします。地獄です。気が狂いそうになります。

新人海兵隊員は考えます。どうして戦争をするのか。この戦争は正しいのか。敵(日本兵)を撃てなくなったりします。そのとき上官は「考えるな」と命ずるのです。

ユージーンも考えなくなります。だんだん戦争に慣れ、麻痺していき、躊躇無く日本兵を殺すことができるようになります。

「撃ちかた止め」の命令にそむいたユージーンに「どうして命令に逆らう?」という上官の非難に対して「ジャップを殺すために俺は来たんだ」と言い切ります。腐った死体の横で缶詰をあけて食事もできるようになります。

ユージーンは戦場で変わりました。人間性を失っていく過程は、恐ろしくもありますが、でも、こうなるしかないんだろうなと思わせます。

ここに個性のある人間というものはありません。ただ、敵を殺す道具です。道具なので考えてはいけないのです。道具は感情ももたないし、疑問をもちません。躊躇したら殺されます。考えない道具になりきれた兵士だけが生き残ります。

「人間性」がそぎ落とされて、道具になった兵士は、ある意味「生きること」だけに特化した純粋な存在なのではないかなと思いました。人間の「歩く・走る・投げる・撃つ・刺す」といった「機能」だけが求められ、その「機能」をいかんなく発揮する道具は美しいとさえ言えます。刀や銃と同じように。

第9話で沖縄戦が出てきて、終戦を迎えます。

俺も戦争に行ったらこうなるかもしれません。それほどまでに、戦場という環境は人間を変えてしまいます。同じ人間を「敵」という言葉でくくってしまえば、人間が一番やってはいけないはずの「殺人」も正当化される環境なんだから。(俺は行かなくても人間性には問題あると言われそうですが) 

「これが戦争の実態だ」などというつもりもありません。俺は快適な部屋でせんべいをかじりながら観ているわけで、そんなヤツが戦争の実態なんてわかるはずがない。「感動大作」などと評価されましたが、俺は感動なんかしません。いや、できませんでした。

快適なはずの環境で見ていても、嫌気がさすほどに、リアリティがあって、優れた映画だと言うことはできます。お勧めのドラマです。

ところで、このドラマの「敵」というのは当然「日本人」のことなんですが、映画として楽しむ分には、それほど意識しません。でも・・・と考えてしまいます。同じような戦争ドラマで、もし、中国で作られた日本兵が敵のドラマならどうなんでしょうか。「感動大作」なんてコピーを付けて日本で宣伝できるのかどうか。
 
  
  
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