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2012/10/03

映画 『星守る犬』 をDVDで観て---おとうさんとハッピーとの短いけれど濃密な旅

121003_1 121003_2(↑: 北海道阿寒湖付近  ↓: 大間から函館へのフェリー) 『星守る犬』をDVDで観ました。【ネタバレ注意】 原作 村上たかし 監督 瀧本智行 脚本 橋本裕志 出演者 西田敏行、玉山鉄二、川島海荷 などなど 劇場では2011年6月に公開されました。

感想・・・

まぁ、なんと言ったらいいんでしょうか。俺には純粋には楽しめない映画の1本になってしまいました。

最初に断っておきますが、犬の映画で、「忠犬」「感動」「お涙ちょうだい」物は、好きではありません。だからこの映画の「泣けるうわさ」を聞いていたので、あまり観る気がしなかったのですが、でも、実際に観たら、別な部分に感情移入してしまいました。

登場人物の犬連れ旅のおとうさんが、あまりにも身につまされました。俺も犬連れ旅行をしているので、とてもフィクションとして楽しめなかったのです。自分の行く末を見るような思いでした。

犬が助手席の窓から顔を出して、外の空気の匂いを嗅ぐシーンだけでも、ジーンとしてしまって、心がかき乱されてしまいます。

おとうさんは、仕事も家族も失って、最後は愛犬ハッピーといっしょに車旅に出ます。もちろん俺と同じ、車中泊です。お金も尽きて最終的にたどり着いたのが、北海道旭川市郊外の山林の奥でした。

ここで車上生活しますが、食べものも少なく、冬の寒さに耐え切れなっかたのか、おとうさんが亡くなってしまいます。でも、この愛犬ハッピーが、おとうさんのそばを離れないんです。町に出ては、ゴミ箱から、食べものを見つけて、おとうさんの元へせっせせっせと運ぶのです。

あぁ、こう書いているうちからまた泣きそうになるので、もうやめますが、ご想像通り、このハッピーもやがて・・・。

半年後、おとうさんとハッピーの死体と車が発見されて、旭川市市役所に勤める主人公の奥津京介たちが確認に来ます。

そのおとうさんのことがなぜか気になって、奥津が休暇をもらって東京へ行き、おとうさんの旅のあとをめぐりながら、北海道に戻るという話です。

でも、ここまで書くと、おとうさんが主人公かと思われるかもしれないし、物語のメインはこの悲しい結末にあるように思ってもらってはこまります。俺が単におとうさんに感情移入しているだけで、この映画のもっと大きなテーマとして、おとうさんの事件は、ひとつのきっかけでもあるのです。

おとうさんの旅をなぞっていくことで、本当の主人公、奥津の、人とあまり関わらない性格が、だんだん関わることに変化していくということ、もうひとり、東京から車に乗せることになってしまった旭川出身の女の子、川村有希も、家から逃げ出してきたのですが、彼女もおとうさんの旅を知るにしたがって、家庭に戻って再出発しようとする、人間成長ドラマなのです。だからメインテーマ上は、ハッピーエンドです。

悲しいおとうさんを知って、なんで彼らは前向きになれたのか? 実は、おとうさんが悲しい結末を迎えたと書きましたが、一方では、俺もおとうさんの旅にあこがれもあるのです。ほんとに不幸だったのかどうか。短い時間だけど、おとうさんと犬は深く愛し合って、ある意味幸せだったということに気がついたからなのです。

人の幸不幸は見た目ではわかりません。心の中はわからないのです。また、わからなくてもいいと思います。どんな境遇にあっても、幸せはあるし、どんなうらやましい生活を送っているように見えても、心の中は不幸で真っ暗だったり。おとおさんの場合も、「不幸な境遇」になったからハッピーといっしょに旅に出ることになって、幸せな時間を過ごせたとも言えるわけだし。

ところで、おとうさんとハッピーとの短いけれど濃密な旅の感覚は、松本清張『砂の器』の親子が物を恵んでもらいながら各地を放浪する感覚に似ていると思います。

「似ている」と感じる俺の中に、「放浪」に対する強い憧れがあるのは間違いないです。

無目的地で、明日もどうなるかわからない。もしかしたら死んでしまうかもしれない。そういった漂い方が放浪です。「そこのどこにあこがれるの?」と聞かれても、俺もちゃんとは答えられません。でも無性にあこがれます。他の人は感じないかもしれませんが。

もう2度とこの映画は観ません。もちろん、これは映画に対して、俺なりの最高の褒め言葉です。     Ya_2「犬連れ日本一周の旅 北海道篇」(YouTube) Ya_2「犬連れ日本一周の旅 東北・関東・甲信篇」(YouTube)        にほんブログ村 写真ブログ 風景写真へ
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コメント

泥以音さん

>飼い犬との会話はとてもシンプル

そうですね。その通りです。

それで思い出しましたが、外国旅に出たとき、知り合った外国人と深いつながりを感じることがあります。言葉があまり通じないのに、です。日本語が通じる日本人以上に仲良くなったりします。

言葉は人間の大きな発見ではあったと思いますが、今は、言葉に頼りすぎているのかもしれません。

その点、犬は、最初から言葉がわからないので、人間が言葉に頼ることも無く、もっと動物的な感覚で接しているから、そこに共感が生まれるのかなと思います。

投稿: あおやぎ | 2012/10/04 16:30

その通り「短い時間だけど、おとうさんと犬は深く愛し合って…」だと、思いました。
老人と犬の短い寿命における<共通性>とその<共感>とは、はたしてなんでしょうか。
最近、盛んに耳にする[sympathy]は、時代が求めても会話が普通の方法では伝わらず、関係が成立しない結果<空虚感>だけが残るのではないでしょうか。
一方、飼い犬との会話はとてもシンプルでしょうから。

投稿: 泥以音 | 2012/10/04 11:03

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