ロシア映画『夏の終止符』を観て (ネタバレ注意)
原題「Как я провёл этим летом/HOW I ENDED THIS SUMMER」)
2010年ベルリン国際映画祭銀熊賞(男優賞)/銀熊賞(芸術貢献賞)
監督:アレクセイ・ポポグレブスキー
出演:グレゴリー・ドブリギン、セルゲイ・プスケパリス
日本では「三大映画祭週間2011」で上映されたそうです。
ロシア映画といえば、昔、名画座がまだ都内に複数あったころによく観たアンドレイ・タルコフスキー監督の『サクリファイス』、『ノスタルジア』、『惑星ソラリス』などを思い出します。あの重苦しい感じがまた良かったりしました。この映画にも少し共通するかな。
ロシア北極圏にある辺境の島の観測所。やたら景色が美しい。放射線量を測るシーンが冒頭にあったので、てっきり「核戦争後の世界」が舞台なのかなと誤解したくらいでした。
この観測所で放射能の数値を測定し、データを送る仕事をしているのが、ふたりの男、セルゲイとパベル。セルゲイは昔かたぎのまじめな男で、パベルはヘッドホンして音楽を聴きながらパソコンでシューティングゲームを楽しむ若者。
登場人物は(最後のシーンを除いて)、このふたりだけです。ある日、セルゲイはパベルに観測をまかせて釣りにでかけてしまいます。そのとき、バベルは寝坊して観測時間を守らなかったり、本部から、セルゲイの家族がたいへんなことになったと報告を受けながら、帰ってきたセルゲイに言いそびれてしまったり。それがきっかけで、ふたりの間には緊張関係が生まれ、やがて銃で撃ち合う事態にまで悪化します。
でも、どうしてパベルが本当のことを言わないのか、まどろっこしくなるし、銃で撃ち合いしなければならないのか、どうして最後は簡単に和解するのか、という感じで、わかりやすい映画ではありません。正直、訳がわかりません。
ただこれを「抽象絵画」だと思って観ると、何か得たいのしれないもの、たぶんそれはソ連時代の過去の遺物である基地の残骸とか放射能を出す機械とかが未だに今のロシア人を縛っていて、しかも世代間ギャップも感じながらいるロシア人の苦悩みたいなものが感じられたりしました。
悲しくなるほどの美しい北極の風景の中であればこそ、人間のそういったどろどろしたものが浮き彫りになってくるということはあるかもしれません。
恐ろしいという感覚でもないんだなぁ、どう表現すればいいのかわかりません。ロシア人だけではないですね。現代の人類が背負っている得体の知れない圧迫感といったらいいか、そんな感じかな、この「抽象絵画」を観て思うのは。解釈は人それぞれ、ということでしょうが。
とにかく自分で観て感じてください、としか言いようがないですね。
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