犬が夢を見る? フランス映画『バクステール』
ヴィーノが「ワウ・ ワウ・ワウ・ ・ ・」と寝言みたいな声を出すことがあります。手足やまぶたが小刻みに震えているので、「夢でおいしいものでも食べているんだろうな」と想像しています。
でも、夢を見るというのは、かなり高度な精神活動なのではないでしょうか?
フロイトは、「夢は無意識への王道」と捉えていました。夢は、無意識世界の願望充足を意味するといいます。
と、言うことは、犬にも無意識の世界があるということなんでしょうか。神経症になる犬もいるということなので、実際あるのでしょう。
無意識の中ではやりたいと思っていることも、意識上は、「それはボクらしくない」とか「おやつをもらえなくなる」とか「怒られる」からという理由でやりたいことを抑えているのかもしれません。その抑え方が度を過ぎると神経症になるということなのでしょう。
犬が何を思っているか、何を考えているかわかったらおもしろいのにと思います。
☆
映画『バクステール』を観ました。
『バクステール/ぼくを可愛がってください。さもないと何かが起こります。』
1988年/フランス映画
出演: リーズ・ドラマール, ジャン・メルキュール, ジャック・スピエセル, フランソワ・ドリアンクール
監督: ジェローム・ボワヴァン
「バクステールという擬人化した犬の視点で語られる異色のサイコサスペンス。偏屈な寂しいひとり暮らしの老婦人にもらわれたブルタリア犬のバクステール。どうしても彼女のことを理解できないバクステールは、堪忍袋の緒が切れ彼女を噛み殺してしまい…。」(「キネマ旬報社」データベースより)
これはブルテリア犬のバクステールが主人公の映画ですが、かなり癖があります。
最初のタイトル部分が、『惑星Xからの謎の生物』を思い起こさせました。
ブラックユーモア漂う異色の犬映画。犬を擬人化して語らせるのは他にもありますが、本当に犬はそんなふうに思っているんじゃないかと思わせるものがあります。バクステールの何を考えているかわからない目のアップのせいでしょうか。
犬を単なる「純粋なもの」と見ないと、こんなかんじになるんでしょうね。高度な精神活動があるんだから、とうぜん犬だって、人に忠実だけではないはずです。人をだましたり、嫉妬したり、ねたんだり、バクステールのように「人を殺したい」と思っているかもしれない。犬だってどろどろしたものがあるはずです。
日本の犬をテーマにした映画は、ことごとく犬は人に忠実で、純粋でかわいくて、だいたい「お涙頂戴もの」が多いですねぇ。それはそれで俺も楽しんではいるし、否定するわけではありませんが、こういうバクステールのような毒をもった犬の映画のほうが俺にはなぜかぴったりきます。気持ちが落ち着きます。犬を理想化せず「犬という動物」として真正面から取り扱っている気がするからです。
逆に言うと、単なる忠犬、かわいい愛玩動物と見る見方は、犬にとって失礼のなにものでもないでしょう。そんな犬は単純すぎて「バカ」に見えるからです。そこまで精神活動が未熟ではないはずです。もちろん単純化・ 理想化しているのは人間なんですが。
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