「ジオラマ作り」、「棚田に立つこと」、「箱庭療法」の共通点
小学生のとき、学校の宿題でジオラマを作りました。
現物が残っていないので詳しくは忘れてしまいましたが、50cm四方ほどの大きさがあったと思います。ダンボール紙を雲形に切り抜き、それを大きいほうから順に層になるように重ねて「丘」を作りました。ダンボール紙の曲線が、ちょうど等高線のようになるわけです。それに色を塗って「丘」にしました。
水色を塗って川を作り、ダンボール紙を小さなブロック状に切って張り合わせて建物にしました。線路も作ったような気がします。今から思えば(こじつければ)、この層が「棚田の段差」に見えなくもないかなと思います。
前も書きましたが「箱庭療法」に興味を持ったのは、ユング心理学の河合隼雄氏の本で知ったからでした。棚田のある風景に立つことと、箱庭を見ている感覚が似ているなぁと思ったからです。そして最近思い出したのは、この小学生時代に作ったジオラマのことでした。3つには共通するものがあります。
ずいぶん前のことなのにはっきり覚えているのは、「気持ちが良かった」からです。ジオラマ作りは「世界を作っている」という感覚があるということなのでしょう。自分の世界観の表現だったのではないでしょうか。
以前、ある俳優のインタビューを聞いたとき、彼が子供のころ、ミニチュアを動かして、勝手に物語を作り、ひとりで遊んでいた、みたいな話を聞いて、なるほどなぁと思ったものでした。彼もまた物語を作ることで自分の世界観を表現していたのでしょう。
「箱庭療法」の真髄は「砂を使う」というところであって、必ずしも「世界を作る」こととは別なのかもしれませんが、調べていくと面白いことがわかってきました。
「箱庭療法」というと精神的な問題を抱える人たちに対する治療方法というイメージですが、箱庭遊びは、何も治療方法だけではなくて、昔から遊びとして行われていたことでした。
日本でも小学校の教科書に載っているくらい、1950年代までは一般的な遊びだったようです。
面白いことに江戸時代にもありました。お盆の上で風景を作った「盆石遊び」と呼ばれるものです。箱庭遊びをする道具まで売られていたそうです。
物理学者の湯川秀樹氏も、幼いころに盆石遊びで自分の世界を作っていたらしい。
子供のころ、砂浜で砂遊びをして楽しかった思い出は多くの人が持っていると思うし、砂遊びそれ自体に癒しの効果はあるようです。砂に触ることで、自然や「母なるもの」を感じ、童心に返るということらしい。意識が退行して無意識世界に近づくということです。
箱庭療法は、イギリス人ローエンフェルト女史が考案した「The World Technique (世界技法)」というものを元に、スイスのカルフ女史が「Sandplay Therrapy (砂遊び療法)」として発展させたものです。
スイスにも昔からミニチュア玩具で遊ぶ伝統があるそうで、この箱庭療法が生まれた場所がスイスだったというのは必然だったのでしょう。
そして河合隼雄氏が日本に導入しました。日本にも伝統的に「箱庭遊び」があったということが、日本で抵抗無く受け入れられた理由ではないかということです。
日本のミニチュア玩具(フィギュア)もすごいですし。
精密機械作り(時計など)も得意だし、スイスと日本には共通点があるようです。
にほんブログ村
最近のコメント