後藤健二さんの死を無駄にしないための日本の「テロとの闘い方」
まずは、犠牲になった後藤健二さんのご冥福をお祈りします。
今回の件は他人ごとではないし、日本人に「テロ」や「格差問題」や「貧困問題」を考えさせるきっかけになるのではないでしょうか。後藤さんの願いでもあったはずです。
巷では「テロに屈しない」とか「テロリストと闘う」とか、勇ましい言葉が躍っていますが、後藤さんの真意とはズレがあるように感じます。
たぶん、戦闘によって傷ついた市井の人々に寄り添った後藤さんの気持ちからすれば、自分の件をきっかけにして「力には力で」という考えに走ることは不本意だろうと思います。
後藤さんのISILアイシル(イスラム国)潜入直前のビデオメッセージ、「シリアの人たちに責任は無い。すべて自分の責任で」と言っている通り、後藤さんは自己責任を覚悟で潜入しました。
本人は、状況判断を誤って人質になったというのは仕事上のミスなので、しかたないと思ったのではないでしょうか。諦めるしかありません。(政府は後藤さんに渡航中止要請していたという) ただ、自分が人質になって、政治的、国レベルの問題になってしまったのは悔しかったと思います。
もちろん相手は犯罪集団であるので、後藤さんは「自己責任」を覚悟していたので、それでいいとしても、残された家族や俺たちが納得できる話ではありません。百歩譲ってテロにも理屈はあるでしょうから、これはテロでさえありません。単なる殺人であり犯罪です。
身代金が取れないとわかったから、「テロ」を装って、日本国の「アベ」を批判してみたり、ヨルダンに収監されている死刑囚の要求までしてみせましたが、そんな要求は鼻からどうでもよかったということが、今となってははっきりしました。
後藤さん個人としては「自己責任」なのでしょうが、「日本人が人質になる・殺害される」ということになってくると、自己責任論では片付けられません。日本人のだれが犠牲になってもおかしくないからです。
それはもう10年以上前から予想されていたことでした。欧米とともに歩むと決断したときから、日本は大きな流れの中に入ってしまったということです。だから突然人質事件が起こったようですが、起こる原因はすでにあって、それがいつ起こるか、という時間の問題だったのではないかなと思います。
アメリカの同時多発テロ911が起こり、テロと戦うといって武力行使したことは、テロを拡大させる結果になってしまいました。
後藤さんの仕事は、つまり、こういう暴力の連鎖は人間を不幸にしているということを訴えているのです。テロや過激思想を防ぐには、暴力に頼ってはだめで、ほかの手段を使わなくてはいけないんだということを、命をかけて示してくれたと言えるのではないでしょうか。
俺は2002年インドネシア・バリ島での爆弾テロのときバリ島にいて、1週間ほど被害者から話を聞きまわっていました。
犠牲になった人たちのことを悪く言うつもりはありませんが、本当に彼らは100パーセント被害者なのか?という疑問が沸き起こり、その後、頭から離れません。もちろん俺はテロや過激思想を認めるわけではないですが、テロを起こしたくなる彼らの気持ちも少しは分かる気がしたのです。
昼間から裸になってどんちゃん騒ぎしながら酒を飲んでいる姿は、敬虔なイスラム教徒にしてみれば、とんでもない堕落にも映ったはずです。そして世界各地での、現地のやり方を無視したような欧米化も反発の対象でした。
欧米のやりかたに対する長年の不満が今の時代に「過激思想」となって爆発したと見えます。やりほうだいにやってきた欧米(それに加担した日本も)の付けが回ってきたということなのではないでしょうか。
それと、当時ボランティアの学生が言ったことは印象的でした。
「クタ(爆弾テロ事件の現場)は、外国人が死んだからこんなに注目された。でも、インドネシアではしょっちゅうテロが起こっているが、外国では無視される。それは問題では?」
バリ島のテロは多くの欧米人が死んだから国際的なニュースになりました。中東や東南アジアやアフリカでは、何人が死ねばニュースになるのか、彼が突き付けてきた国によって命の価値に格差があるように見える世界の現実に俺は何も言えませんでした。
付けを払うのは時間も労力もかかるのです。爆弾落として終わり、テロリストを殺して終わり、というわけにはいきません。
そうすると日本の進む道はおのずと決まってきます。
今回ISIL(アイシル)からは「日本人を見つければ殺戮を続ける。日本にとっての悪夢を始めよう」と、名指しされてしまいましたが、この脅しにひるむことなく、やっぱり中東、イスラムの国々に対しての人道支援を地道に続けるしかないのかもしれません。
そしてテロリスト予備軍や過激思想集団予備軍を作らないということによって、時間はかかるかもしれませんが、これが日本の「テロとの闘い方」になるのではないかと思います。
後藤さんの死を無駄にしないためにも。
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