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2015/02/08

映画 『リミットレス』 を観て思った、脳を100パーセント使うこと

141214(羊の脳みそサラダ トルコ・イスタンブール)

『リミットレス』
アラン・グリンによる2001年製作の小説『ブレイン・ドラッグ』(原題: The Dark Fields)を基に、レスリー・ディクソンが脚本を書き、ニール・バーガーが監督を務めた。(wiki参照

【監督】 ニール・バーガー
【出演者】 ブラッドリー・クーパー(エディ・モーラ)、ロバート・デ・ニーロ(カール・バン・ルーン)、アビー・コーニッシュ(リンディ)
【製作年/国】 2011年/アメリカ

通常20%しか使われないといわれる人間の脳を100%使える薬を手にした主人公エディが、成功とともに謎の存在に狙われる立場になるというサスペンス映画です。

映画自体はそれほど面白いと思いませんでしたが、このストーリーの設定には興味が引かれました。禁断の新薬「NZT-48」という超覚せい剤とも言える薬を飲むとスーパーマンになれるという話です。

脳が薬によって100パーセント使えるようになるからですが、逆に、実際の人間の脳はなぜ100パーセントは使われていないんだろう?と考えてしまいました。

人間の脳がほかの動物と比べて体重の割には巨大なのは、複雑な社会生活での問題を解決するためだとする説があります。これを「社会的知性仮説」と呼ぶそうです。

でもせっかく大きくなった脳を20パーセントしか使わないのはどうしてなのでしょうか。それを考える前に、脳が20%、あるいは10%しか使われていないというのは俗説らしいです。ただいつも100%使われているわけではないという意味では、ある程度の目安なのかもしれませんが、10%や20%に科学的根拠はないそうです。(「知能と心の科学」Newton参照)

「将来に対する保険」であるかもしれないなぁとも思います。これから何万年、何十万年存在し続けるかわからないですが、人類がこれから起こるだろう数々の困難を解決できるように余力を残しているのではないかと思うんですよね。もし100パーセント使ってしまっていたら、今の時点ですでに限界でしょうから。

そしてそもそも、100パーセント使うことが「良いこと」あるいは「進化した状態」なのか?という疑問もあります。

余力を残すということと関係するのかもしれませんが、100パーセントではない、ということにはやっぱり意味がありそうです。こういう状態でバランスしているのではないか。むしろ、100パーセントにならないように「進化」したのではないかと。

前にも書きましたが、実際こういう話があります。

オリヴァー・サックス著『妻を帽子と間違えた男』には、麻薬を大量に服用して犬の夢を見て目覚めたとき、犬並みに嗅覚が鋭くなっていた医学生の話が出てきます。まるでカフカの『変身』のようなことが起こるのです。原因ははっきりしないらしいのですが、抑制が外れて、もともと持っていた能力が使えるようになったということらしい。

人間の嗅覚が犬より劣るのは、能力が無くて劣っているのではなくて、抑えているから、という説だそうです。でも、匂いを感じる受容体の数そのものが違うだろうし、単なる脳の活動だけの問題ではないようにも思います。俺がウサイン・ボルトのように走れないのは、筋肉や体力がないからであって、いくら脳を活性化させても速く走ることはできないでしょう。

だからこの説には疑問ですが、ただ、こういうことは言えるのではないでしょうか。その能力は、その時代、その環境で、絶妙にバランスを取っているに過ぎないのではないか、「能力が優れている」ということは「進化」とは関係ないのではないかという気がしてきたのです。

だから人間は、「脳を100パーセント使いたいのに使えない」のではなくて「100パーセントは使いたくないから使わない」だけなのではないか、ということなのです。

もし脳の使用率が変わってしまったら、別なところも変わらざるをえず、それが人間にはマイナスとなるのかもしれません。

考えてみれば、自分の周りの環境のすべての刺激に対して、100パーセント脳をフルに使っていちいち反応していたら、たいへんなことになるのではないかと想像はできます。疲れてしまうでしょう。人間はある程度「鈍感」になるように脳を適応させているのかもしれません。

「なるべく無駄なエネルギーを使わない」というのが生物の進化の方向性でもあるようなので。
 
 
 
こちらに『ルーシー』について書いています。

映画 『ルーシー/LUCY』 脳の機能を100パーセント使うこと (2017/02/05)
 
 
 
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