2015年秋の撮影旅(17) 赤塩の棚田 カミへの感謝の表現形「収穫祭」
長野県飯綱町赤塩の棚田を探しに行ったとき、集落では祭りの最中でした。見たら寄らずにはいられない性分なので、当然、また祭り見物することにしました。
その前に棚田を撮影しておこうと、「赤塩の棚田はどこですか?」と聞いたら、
「そんなの聞いたことないですね」
と、40代くらいの男性は言いました。でも、他の人とあぁでもないこうでもないと相談が始まって、「あそこの段々になった田んぼじゃないかな」という結論になりました。
「先に棚田へ行って、あとで戻って来ます」と挨拶して、神社の奥の方へ入っていくと、確かに沢沿いに広がる段々になった棚田はありました。収穫間近です。
撮影後、集落に戻りましたが、太鼓と笛の音で、どこにいるかはわかりました。音を頼りに向かうと、ある家の庭先に人がたくさんいました。
見ると、家の中では獅子舞が踊られていました。この獅子舞は「男獅子舞」と「女獅子舞」の2種類があって、家ごとにどちらを舞うかは決まっているようです。同じ踊り手の獅子ですが、所作をみれば2つの違いは一目瞭然です。「男獅子舞」は剣を持ったりして荒々しい動きですが、一方の「女獅子舞」は柔らかくおっとりしています。
獅子舞が終わると、獅子は子どもたちの頭を噛む所作をしたりします。健康に育ってほしいという願いでしょうか。それと、お菓子がまかれる家もありました。それを拾おうとする子供たちが、獅子舞には冷淡だったのに、いっせいにテンションが上がります。
そうやって家々を訪ねては獅子舞を踊って、村を練り歩きます。
ところで赤塩のお神輿が面白いと思たのは(今まで見たことがなかったので)、お神輿を人が担ぐのではなくて、リヤカーに載せて、引くのです。(どうしてそういう形になったのか聞きそびれたのは残念です)
けっこう坂も多いので、簡単に引けるわけではありません。だから元気のある男衆が引いています。
この行列が黄色い田んぼを行く風景はいいですね。おそらく、日本各地で、まさに今日、同じような収穫祭が行われているんだろうなと思うと、なんだかジーンとしてきました。
収穫できる喜びをカミ様に伝えたい、感謝の気持ちを表したい。そういう感謝の表現形が秋祭りなんだと実感できました。カミ様に喜んでもらって、山に帰っていただき、また来年、里に下りていただく。そういうサイクルが毎年同じように滞りなく続くようにという願いを込めて。
伊勢神宮の「初穂曳」は、日本を代表する収穫祭ですが、こういった村々の祭りも素朴でいいですね。農民の嬉しさや、カミへの感謝が、素直に表現されていると思います。
ある家の人から「缶ビールどうですか?」と聞かれ、「車なので」と断ると、ちゃんと今の時代ノンアルコールも用意されていて、それは喜んでいただきました。
「今年は珍しく天気も良くて。いつも雨が降ったりしてたいへんなんですよ」と言いました。
そうか、今年は運が良かったんですね。雨が多い秋だと感じていましたが、この日に限ってはまさに「秋晴れ」でした。
夜の11時半から獅子舞が神社で奉納されるそうですが、夜通し踊りを見るというのは、インドネシアの影絵を思い出しました。
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