何かに取り付かれたような盛り上がりが一番怖く映った東京オリンピックのエンブレム騒動
佐野氏デザインのオリンピック・パラリンピックのエンブレムが白紙撤回されることになりました。
また公募があるんでしょうか? でも、怖くて、誰も 応募しなかったりして。個人で世界中のデザインを確かめるのは無理で、同じような問題に発展する可能性があります。
いくらオリジナルデザインだと思っても、探せば絶対似たようなものは見つかるし、また、ネットという技術が発達したのでなおさらです。
佐野氏のエンブレムが白紙撤回になって、良かった、良かったと思っている人がいたとしたら、それはあまりにも単純な発想かと思います。
次に、公募されたエンブレムについては同じようにネット民が捜索能力を発揮するだろうし、エンブレムだけではないですよ。今後オリンピックまでには、大会ソング、大会マスコットなど、いろんなことが決められていきます。
これにいちいち「似ている」だの「パクリ」だのといちゃもん付けられて、対応していたら、いくら時間があっても足りません。
ここで面白いと思うのは、リオ・オリンピックのエンブレムです。これもアメリカの慈善団体のと似ていると言われていて、たしかに明らかにコンセプトからして、似ているのにもかかわらず、取り下げていません。これは何なのでしょうか。国民性でしょうか。
日本人の、「火種になりそうなものは早めに取り除く」という国民性がここでも現れたのかなぁと思います。つまりクレームに弱い日本人。
ある線で、毅然とした態度でいかないと、収拾つかないことになってしまいます。
そもそも俺はベルギー人の劇場ロゴはパーツは似ていたけど、偶然だと思っていたし、こういういちゃもんつける人間は絶対現れるだろうとは思っていました。(ここでどうしてネット民たちがベルギーのロゴに似ているのを探す方向に行かなかったのかが興味あります。探せばいくらでも見つかるはずなのに)
でも残念なのは、佐野氏のデザイナーとしての姿勢に問題があったのは事実で、この騒動を招いた原因でもあるので、当然責任はあります。
空港の写真に関して、俺も写真家の立場から言えば、写真のコピーは許されないものですが、ただ、エンブレムそれ自体の重要度からみたら、元々は内部資料用だったということもあり、レベルが違いすぎます。今回エンブレムが問題になったから、この空港の写真も問題になったわけで、そうじゃなかったら、誰も問題にしないレベルです。
それにしても、どうしてスタッフにでも頼んで、空港の写真くらい撮りに行かせなかったのか疑問です。外国の空港でもない近場なのに。
たぶん、そこが佐野氏の仕事の姿勢なんでしょうね。ネットに頼り切っていた。プレゼン用の写真は常にネットからコピーして使っていたと思われてもしかたない。(写真家にちゃんと使用料を払ってください) そしてネットをなめてもいた。ネットの便利さを最大限に利用していた佐野氏は、その便利さによって、足元をすくわれた、ということ。
盗用かどうかなんていう問題はどうでもよくなり、あの佐野氏のデザインだというところに問題は移り、華やかで明るくクリーンなオリンピックという世界の祭典には、もはやふさわしくないネガティブなイメージがついてしまい、もう、にっちもさっちいもいかなくなり、それは関係者も感じていたでしょうから、この空港の写真盗用が発覚しなくても、白紙撤回していたのではないでしょうか。
今回は、本当にネットのすごさがあらためてわかった件ですが、行き過ぎると、こうなってしまうのか、という怖さもあります。
エンブレム問題とは関係ない佐野氏の親族の写真や、自身のメールアドレスなどもさらされているそうです。これは何なのでしょうか? もはやリンチ、犯罪ですよ。佐野氏を批判する資格はありません。これはやりすぎでしょう。
いったん「黒かも」と疑われると、いつのまにか「黒だ」に決め付けられてしまう恐ろしさも感じました。結果的に佐野氏の仕事に問題は見つかったのは事実ですが、発端であったエンブレムについては白黒ついていない段階で、すでに「黒だ」になり、こんなこと許されていいのかと思いましたね。
この異常なお祭り騒ぎに、普段は的確な意見を言う著名人までもが参戦し、証拠もないのに「黒だ」と叫んで非難する姿を見て、逆に恐ろしくなりました。もはや真相なんてどうでもよく、お祭りに燃える自分の姿に陶酔しているようです。デザインという見た目にわかりやすくて、素人が参戦しやすかったという理由も大きいでしょう。
この、何かに取り付かれたような日本人の盛り上がりが、一番怖く映ったエンブレム騒動でした。
次のエンブレムも、同じ騒動が懸念されます。
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