心理学者 高橋惠子著 『第二の人生の心理学 写真を撮る高齢者たちに学ぶ』
心理学者、高橋惠子さんの『第二の人生の心理学 写真を撮る高齢者たちに学ぶ』(金子書房2011)を読みました。
この本のサブタイトル「写真を撮る高齢者たちに学ぶ」に興味をひかれたからです。
本の「はじめに」には、
「定年後に、あるいは子育て後に、アマチュア写真家として学習を続けている市民グループを4年にわたって追跡し、第二の人生を充実させるコツを明らかにしてみました」
とあります。
研究の対象者は、長野県上田市で活動する写真愛好家団体「写友まゆ」のみなさんたちです。
全国へ撮影に出かけると、アマチュアカメラマンがたくさんいます。しかも高齢者が多いです。もちろん時間をとれるのは定年後という日本の事情もあるのでしょうが。
これは何も日本だけの話ではないようで、中国でもガイドから聞いた話があります。定年を迎えた親に、老後の趣味になるようにと、子供たちがカメラを買ってあげるのが流行っているらしいのです。
「どうして?」と聞いたらガイドは、
「写真はどこかに出かけて運動にもなるし、いい親孝行の方法なのです」
との答え。
写真というのは、「念写」でもしない限り、現場に行かないと撮れません。当たり前のことですが、ここが大切なのです。つまり脳だけではなく、身体も使うところがミソです。とくに風景写真の場合は。
マラソンなどのハードな運動ではなく、カメラを持って野山を歩いたり、止まったり、適当な運動がいいようです。五感を使って風景を味わい、仲間と切磋琢磨し写真の技術を上げ、コンテストに入賞して達成感を味わったりと、心身にいい影響をもたらす要素がたっぷり含まれているのが写真撮影なのです。老後の趣味としては理想的かもしれません。
ところで、この高橋先生の研究でわかったことで興味深いのは、家族の支えというか、家族の理解というのが大きなポイントでもあるらしい。家族も巻き込んでの写真活動というのが、心身にも好影響を及ぼすということらしいのです。
わかる気がします。たとえば家族がいい顔をしない環境だと、写真を撮りに出かけることに後ろめたさやストレスを感じ、いい効果は期待できないからです。
それといろんなものに対しての好奇心が衰えないことです。いい写真を撮るためには、自分で情報を集めたり、写友や指導者から技術の吸収をしなければなりません。
年齢によって被写体(テーマ)を変えていくのもいいようです。体力がなくなってきたら山には登らないで、近辺の草花にレンズを向けてみるとか。
無理はしないということですね。人の強制や義務感でやるのは、あまり良いことではありません。そもそもそんな写真は長く続かないでしょうし。
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