自然な景観(棚田など)が人の心に与える影響
棚田が好きなのは、棚田が広がる現場に立つことが気持ちいいからです。
自然の風景は人を癒したり、ストレスを軽くしたりという効果は、棚田に立つ経験からもわかります。
それを科学的に裏付けるような「自然な景観が人に与える影響」を調べた心理学調査があります。
ここにも「自然な風景は人の精神に良いものであり、人を回復させ元気にさせる何かがある」とあります。人工物よりは自然の風景が良いらしいのですが、ここまでは予想はついたので、はっきり言って、それほどの驚きはありません。(棚田は人工物ではないのか?というツッコミは、今回は無視させてもらいます)
でも、ちょっと気になったのは、次のことです。
「驚いたことに、殺風景な壁とプラズマテレビの画面では、ストレス度の低下の面で差がなかった」というのです。Jolina Ruckert氏は「自然空間を見ることは実際にストレスを低減させるが、自然のデジタルな複製は、退屈な壁と同程度の影響しか持たなかった」と述べています。
つまり、写真やテレビで見る自然の風景は、それほどの効果はないと受け取ることもできます。写真家という立場からすると、あまり嬉しい情報ではないのですが。
そこで思い出しました。「ハイパーソニック・エフェクト」というのがあります。
音楽を聴いたとき、人間の耳には聴こえない超高周波成分が、人間の生理活動、脳活動で快さをもたらすという説です。この効果に気がついたのはLPからCDに代わるころ芸能山城組の山城祥二(大橋力)さんたちです。(ただ、超高周波成分は耳ではなくて体(肌)で浴びる必要がありますが)
ちなみにインドネシア・ガムラン音楽には、多くの超高周波成分が含まれているそうです。
「音」で、人間の耳には聴こえない周波数成分が心に影響しているなら、「光」についても同じようなことはあるのではないでしょうか。
目には見えない、「可視光線」以外の光、電磁波ですね。たとえば、赤外線や、紫外線(不可視光線)。こういったものがもしかしたら人間の心に何か影響を与えているのではないかと。
写真やテレビでは効果がないというのは、生の演奏から超高周波成分が抜け落ちたCDを聴いているようなもので、現実の自然の風景には、不可視光線もたくさん含まれているはずです。そういうものがあって初めて癒されたり、ストレス軽減されたりするのかもしれません。そう考えれば、「写真やテレビでは効果がない」ここと矛盾しません。
「聴く」とか「見る」というのは、耳や目だけの話ではなくて、もっと全体的な心的活動なんだということでしょうね。棚田に立った時、目で見ているだけではなくて、匂いや温度なども感じています。五感を総動員して棚田を味わっているのです。
「聴く」も「見る」も体験です。現場に立たなければ、本当の意味での「聴く」も「見る」もしていないということになるようです。(ただ「自然写真」に意味はないと言っているわけではありません。芸術としての「自然写真」は、あくまでも作家の内面の表現であり、別な感動と意味があります)
実際の体験が人間には必要だということなのでしょう。本やテレビやラジオやネットで見聞きしているのはあくまでも意識できるレベルでの情報でしかなくて、その先にある広大な世界のほんの一部分をかじっているにすぎないということなのではないでしょうか。しかも一見無駄とも思える、俺たち人間が感知できない何かが、実はとても大切な働きをしているかもしれない、という話は考えさせられます。
現場に立つ大切さはここです。
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