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2016/04/12

映画 『ダイダロス 希望の大地』を観て

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映画 『ダイダロス 希望の大地』 を観ました。2012年公開のカザフスタン映画、2時間18分の大作です。カザフスタン映画というのは珍しいかなと思います。

ロシアからの独立20周年記念作品として国家史上最高額の8億円を投じ、国の威信をかけて製作された、迫力の歴史スペクタクル作品です。2012年度アカデミー賞・外国語映画賞エントリー作品になりました。

だいたいのストーリーはこんな感じです。

18世紀のカザフスタンが舞台です。モンゴル族(「ジュンガル」と呼んでいました)が押し寄せてきて、家族を殺されてしまいます。いったん山奥で暮らしますが、民族の誇りと愛する人を守るため、カザフ族の青年サルタイは同じ10代の勇士たちと報復を誓い、敵陣へと乗り込んでいく、というものです。それは何十年に渡るモンゴル族の迫害から祖国を開放する歴史に残る闘いになりました。

物語としてはそれほど複雑ではないのですが、圧倒的なスケール感と、なんと言っても大草原のすばらしさには涙が出そうです。

カザフについては特別な思いがあるからです。

カザフという人たちを知ったのは、中国新彊ウイグル自治区の北西、博楽市にサリム湖(賽里木湖)と呼ばれる湖があって、そこに写真を撮りに行ったときでした。

透明な水をたたえた海抜2073メートルの湖の周りは、カザフ族の夏の放牧地で、青々とした草原に白いユルト(移動式天幕住居)が点在していました。

カザフ族は今は完全な遊牧民ではありませんが、夏・冬と家畜を移動させて暮らしているので、持ち運びができるユルト住まいなのです。草原では、馬、羊、ラクダの放牧をやっています。

俺は湖畔のドライブインの宿に10日ほど泊まって彼らの写真を撮っていました。

夏の3ヵ月間、カザフ族はサリム湖畔で暮らします。秋になって草原の草が枯れ、家畜の放牧ができなくなると低地へと帰っていきます。

10日間で結婚式にも参加したし、男たちと酒盛りもしたし、ある家族とは友だちになりました。

そろそろサリム湖を離れようと思っていた日のこと。空は青く澄みきって、快い風が吹いていました。俺は高原の空気を満喫しながら、何度かおじゃましていたユルトのおばさんが淹れてくれたお茶を飲んでいました。そして、何気なく、

「どうして夏はここで暮らすんですか?」

と聞いたのでした。彼女にこう聞いてしまったあと、「羊や馬の牧草のため」と、答えは分かりきっているじゃないかと、くだらないことを聞いてしまったなぁと後悔したのですが、彼女はこう答えたのです。

「だって低いところは今とても暑いのよ。ここは涼しくて気持ちがいいじゃない」

これは予想外の答えでした。そして、

「嫌なことはやらずに好きなことをやればいいのよ」

と言っているように聞こえたのです(そう感じたのです)。

あとで日本へ帰り、カザフ族のことを調べてみると、中央アジアの大草原で遊牧生活を送っていた人たちの一部が「自由人」という意味で「カザフ」と呼ばれたのが、今日のカザフ族のはじまりだと知りました。彼らは文字通り草原の自由人だったのです。

こんな体験があって、俺も遊牧民みたいな暮らしがしたいなぁとあこがれて、2009年には1年かけて、奥さんとヴィーノを連れて、日本一周の車旅に出たきっかけにもなりました。

俺には「カザフ」という人たちは懐かしくも、大切な思い出のひとつなのです。
  
 
 
 
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