【犬狼物語 其の十一】 東京都渋谷区 都会の中の異界、宮益御嶽神社
何だか、お犬様を求めて旅をするようになったら、時代が50年ほど昔に戻ったような、不思議な感覚に陥る機会が多くなったような気がします。
秩父地方そのものが、一つの小宇宙だったということがあって、古い文化が残ってきたのはわかりやすいのですが、まさか大都会のど真ん中、渋谷駅の近くにこういう空間があると、とても驚くのです。
渋谷駅を出て、宮益坂を上り始めるとすぐ、ビルの間に続く階段が現れます。そこへ入り込むと、突然静かになります。
表通りはあんなにも人がたくさん行き来しているのに、こちらへ入ってくる人はいません。いや、ほとんどの人はここに神社があることさえ気が付きもしないのです。俺も何度もここを通っていますが、階段に気が付いたのは初めてです。
そのギャップ。これも都会の神社ならではでしょう。
鳥居と碑があるので、神社がこの先にあるんだろうなと想像できるのですが、ビルへ飲み込まれていきそうな階段が、どこか異界へ迷い込む道のようでもあり、少し不安感をあおります。
これも神域へ入っていく舞台装置としては、都会的で面白いかなと思うのですが。
しばらく上ると、二の鳥居が現れ、その下にお犬様の狛犬が見えました。これは偶然なのか、計算された演出なのか。
上り切ったところはビルに囲まれた宮益御嶽神社の境内になっていて、美しいジャリ石が敷かれています。
拝殿の手前にある狛犬はブロンズ製で、新しいように見えます。元々の狛犬像は、江戸時代の延宝年間の作品だそうですが損傷が激しいので社務所で保管し、これは原形をモデルにして製作されたブロンズ製なのだそうです。
社務所では、お犬様のお札と、御朱印をいただきました。お札は少しだけ凹凸があったので、もしかしてと思い、「これは手刷りですか?」と聞いたら、「そうです」というではないですか。
今では、お犬様のお札は印刷が増えてきたということは、秩父の神社でも聞いていたので、こんな大都会の真ん中の神社で、手刷りのお札を出していること自体、とても驚きました、でも、考えてみると、「手刷り」の価値が見直されていることを考えれば、むしろ先進的な都会の神社で出していることは、ある意味必然のようにも思いますが。
お札を定期的に替える行事や祭りはありますか?」と聞いたら、「そういうのはないです。みなさん自由に求められて、替えているのではないでしょうか」ということでした。さすがにここで「オイヌゲエ」はありませんでした。昔はどうだったかわかりませんが。
御朱印の方にも一対の黒いお犬様が描かれています。
にほんブログ村
| 固定リンク
コメント