【犬狼物語 其の十三】 東京都墨田区 動物供養で有名な回向院の「は組新吉の八之塚」
今日は、回向院の「唐犬 八之塚」です。どちらもワンコの名前は「ハチ」です。
昨日も書いたとおり、忠犬ハチ公の話は日本人には有名ですが、犬についていろいろ調べている中で知った「唐犬 八之塚」を探して訪ねました。
回向院がペット供養をやっているという話はなんとなく知っていましたが、境内には、「猫塚」、「オットセイ供養塔」、義太夫協会の「犬猫供養塔」、「小鳥供養塔」など、さまざまな動物の慰霊碑、供養碑があります。
江戸の「振袖火事」で亡くなった身元のわからない人々、身寄りのない人々を手厚く葬るために「万人塚」を設けたのが回向院ができたきっかけで、「有縁・無縁に関わらず、人・動物に関わらず、生あるすべてのものへの仏の慈悲を説くもの」が理念だそうです。
境内の馬頭観世音菩薩像が安置されている馬頭堂がペットの納骨堂にもなっています。お堂の前には犬の像のある献花台、周りには、数えきれないほどの卒塔婆があって、半分は愛犬、半分は愛猫ですが、中には兎、鳥、モルモットもありました。
さて、目的の「唐犬 八之塚」ですが、なかなか見つかりません。それでお堂の献花を取り換えていた女性に聞いたら、いっしょに探してくれるというので、探したら、鼠小僧次郎吉の墓の裏側にひっそりとありました。
塚は、高さ74cmくらいの石で「唐犬 八之塚」という文字や犬の像が刻んであります。「唐犬」とある通り、耳は垂れていて、和犬の姿とは違っていました。左下「施主 は組新吉」とあります。慶応二年(1866)のものです。
北海道の小樽には「消防犬ぶん公像」というのがありましたが、町火消 「は組」の新吉が飼っていた八も、「消防犬」だったのでしょうか。
それにしても、文字や絵の彫が浅く、所々剥奪しているので、ちょっと見では、これが犬の塚だとは気が付かれないかもしれません。さっき通り過ぎた時も、目には入ったはずですが、(しかもネットで前もって見ていたはずなのに)、通り過ぎてしまったくらいです。
小佐々学氏「日本愛犬史」によると、グレイハウンドやマスチィフに似た大型の洋犬の姿が彫られていることが判明したそうです。「大型で珍しい洋犬を引き連れて,胸を張って誇らしげに幕末の江戸市中を歩く新吉の姿が想い浮かぶのは筆者だけではなかろう」と言っています。
ところで、塚をいっしょに探してくれた女性の話は興味深いものがありました。
回向院では、もしペットが亡くなった時、火葬してお経も上げてもらえるという。誰でも受け入れてくれるそうです。
「最近の飼い主さんはずいぶん様変わりしましたよ」
「どういうふうにですか?」
「ただ可愛い可愛いだけの飼い主さんが増えてきたような気がしますねぇ」
彼女の言わんとしていることはわかる気がしました。犬を「愛玩動物」というより「愛玩道具」だと感じているのでは?と思える人も、確かにいます。
「人と犬はお互い、持ちつ持たれつで、ただ可愛い可愛いというだけのペットではないと思います」とのこと。
それと面白い話を聞きました。
「犬の飼い主は丁寧にお参りしていくんですが、猫の飼い主は意外にあっさりとお参りを済ませて帰ってしまう人が多いですね」
「それって、犬と猫の性格そのものですね?」
「そうなんですよ」
飼い主の性格と、動物の性格が似ているという話はよく聞きますが、お参りの様子にも現れていることに気が付くというのは、さすがここで長年働いている人だなと、妙に感心しました。
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