【犬狼物語 其の四~八】 秩父地方の、お犬様の札を替える行事「オイヌゲエ」
4月上旬から始まって、このゴールデンウィークで、今年の秩父地方の「オイヌゲエ」のシーズンは終わりました。
俺たちもヴィーノを連れて、いくつかの「オイヌゲエ」を周りました。
5月3日には城峯神社(秩父市)と八日見龍頭神社、5月5日には城峯神社(神川町)と両神御嶽神社。
それと、オイヌゲエが先月18日に終わっていた両神神社のお札だけは、隣の両神山荘で譲ってくれるというので、管理人さんに頼んで譲ってもらいました。
オイヌゲエに関わる神社の狛犬は、お犬様の像ですが、中には、どう見てもオオカミではなくて、本当に犬のように見える狛犬もありました。
それぞれ、お札にも特徴があって面白いですが、その神社での物語がまた良かったのです。歴史を感じさせる使い込まれてすり減った版木の数々や、神社のロケーションと宮司さんのおもてなしには感動しました。
こんなところがまだ東京に近い関東圏に残っていること自体、奇跡と言えるほどで、もしかしたら、二ホンオオカミの目撃情報は、本当かもしれないなどと思ったくらいです。
宮崎駿監督の『もののけ姫』にもオオカミが登場します。白く大きな三百歳の犬神、モロの君。もののけ姫のサンがモロの君に育てられたという設定です。
日本ではオオカミは絶滅してしまいました。森のカミが消える(カミを殺す)ということの意味は、文字通りオオカミを殺すこと以上に、自然との関係性を断つものなのだなぁとあたらめて思うのです。
宮司さんが出してくれたおいしい山菜料理の数々は、どれもが山に自然に生えていたものだそうで、山に暮らす人たちが、山から恵みを受けてきた確かな証です。その感謝の表現としてお犬様(オオカミ)信仰があるというふうに見えてきます。
だから「オイヌゲエ」が古臭い行事なのではなくて、むしろ現代人には必要な行事なのかもしれないのです。もちろん、形としてはこのまま続いていかないと思うので、現代的なアレンジは必要だとは思いますが。
オオカミに育てられたもののけ姫のサンは、自然と人間の橋渡しをする立場でもあります。「オイヌゲエ」も、自然と人間の関係性を象徴するものではないでしょうか。
ちょうどこの前、築地市場では魚の供養祭が行われていることを知りました。これもまた日本人の、自然との関係性が垣間見えるものなのかなと思います。
日本人は、人間だけ独立して存在するのではなく、森や海やオオカミや犬や魚など、草木虫魚、あらゆる自然との関係性を大切にしてきたのではなかったでしょうか。
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