村上龍著 『日本の伝統行事 Japanese Traditional Events』 日本人の「立ち位置」の再確認
文:村上龍、絵:はまのゆか、英訳:ラルフマッカシーの『日本の伝統行事 Japanese Traditional Events』(講談社)の「田植え Planting Rice」のページに棚田写真を使ってもらっています。
この本には坂本龍一プロデュースの「日本の童謡と唱歌集」CDも付いています。
日本の行事が日本語と英語で紹介されていて、あらためて日本人が日本の行事を知るきっかけにもなるし、もしかしたら2020年の東京オリンピック・パラリンピックが意識されているのかもしれませんが、世界の人たちに知ってもらうきっかけになる本なのではないでしょうか。
「グローバリズム」とはよく言われることです。世界中がつながり、人と物と情報の行き来が活発になっている状態です。それとセットで現れてくるのが、村上氏も触れていますが、国家の枠の弱体化や共同体意識の喪失です。
ただ我々日本人の生活・文化が世界標準に飲み込まれていくということではない気がします。いやむしろ、ローカル文化を良く保っているからこそ、グローバリズムが意味を持ち、ローカル文化に価値が生まれると思うからです。
地元の文化を掘り下げていくことは、決してグローバリズムと逆行するものではないでしょう。
「立ち位置」と言ってもいいのでしょうか。世界の標準を知るためにも、そこからどれだけ離れているのか、変わっているのか、あるいは同じなのか、それを判断する基点になる「立ち位置」は必要です。
その「立ち位置」の定まらない人は、けっきょく、自己中心的で世界人にはなれないということ。自国・地元の文化も知らない人が世界の文化はわかるはずがないのです。
俺も日本の棚田の撮影をしていなかったら、日本のことは何も知らなかったでしょう。いまだに日本の文化を詳しく知っているわけではないので、自戒の念を込めて、また、そうなりたいという希望も込めて、こう書いておくのですが。
ところで、この本について、ひとつだけ惜しいと思ったのは「旧暦」についての記述が少なかったことですね。日本の伝統行事が旧暦といかに強く結びついていたか、そこのところを村上氏には書いてほしかったと思います。
村上龍氏は、この本についてこのような思いを書いています。
「『JTE』の制作中、まるで朝日が昇ってくるように、日本の伝統行事に対するわたしの基本的な態度が、自然に浮かび上がってくる瞬間があった。それは「敬意と愛情」で、通常だと言葉にするのが少し照れくさい感じもあるが、不思議なことに「日本の伝統行事」に対しては、素直にそう思えて、副題とすることにした。表紙で、綾瀬はるかさんのネイルに、ネイリスト・高橋春菜さんの、美しいデザインを配して副題を示し、『JTE』の理念を象徴させている。」
公式HPはこちら。
| 固定リンク
コメント