【犬狼物語 其の八十】 長野県駒ケ根市 霊犬早太郎の像
静岡県磐田市のキャラクターになっているのは「しっぺい」ですが、「しっぺい太郎」伝説から生まれたもので、磐田市の見付天神には「しっぺい太郎」の像が建っているということは、すでに書いています。
その「しっぺい太郎」は、信州赤穂村(今の駒ケ根市)光前寺に飼われていた名犬で、若い娘を人身御供に要求する怪物(一説にはヒヒ・大猿)を退治ししました。
光前寺では「早太郎(はやたろう)」と呼ばれている霊犬のことです。
駒ケ根市のHP、光前寺のHP、この「霊犬早太郎伝説」が載っています。
伝説の概要は、次のようなものです。
700年ほど昔の話。
光前寺和尚さんは灰色の犬を「早太郎」と名付けてかわいがっていました。
ある日、お寺の裏山に恐ろしい怪物が出てきて子供をさらおうとしたとき、早太郎は風のような速さと、すごい力で怪物と闘って子供を助けました。
その頃、遠州(静岡県磐田市)では田畑が荒らされないようにと、毎年祭りの日、娘が生け贄として神様に捧げられる人身御供が行われていました。
ある年、村を通りかかった旅のお坊さんは、その正体をみとどけることにしました。祭りの夜に様子をうかがっていると、大きな怪物が現れ、「今晩、信州信濃の早太郎はおらぬか。このことばかりは早太郎に知らせるな」と言いながら、娘をさらっていきました。
お坊さんは一日も早く信州信濃の早太郎を探そうと思い、旅をしている六部という人に頼みました。六部は早太郎探しの旅に出かけ、ようやく光前寺の早太郎をさがし当てると、早太郎をかり受け、急いで遠州へと帰りました。
次の祭りの日には、早太郎が娘の身代わりとなって怪物(老ヒヒ)と戦いました。翌朝、村人が見に行ってみると 早太郎の姿は見えず、老ヒヒが血まみれになって死んでいました。
早太郎は怪物との戦いで傷を負い、血まみれのまま、光前寺までなんとかたどり着くと、和尚さんの前にきちんと座り、じっと和尚さんの顔を見ていましたが、「ワン」と一声ほえると倒れて死んでしまいました。
和尚さんは死んだ早太郎の体をやさしくなでながら「早太郎、よくたたかったな」とほめてあげました。そして杉の木に囲まれた本堂の左横に穴を掘り、永い眠りにつかせてあげました。
こういう伝説です。
実は、この霊犬早太郎と似た伝説は、磐田市だけではなく東日本に点在していて、たとえば、山形県鶴岡市の椙尾神社に伝わるのは「めっけ犬」、天童市の妙見神社に伝わるのは「べんべこ太郎」、栃木県佐野市の「ちょっぺ太郎」などあります。
こういう話の類型は、化け物から美女を救う話で、「滅怪(めっけ)」(妖怪退治)伝説というそうです。
駐車場から仁王門を入り、参道を進んでいくと三門がありますが、現在屋根の葺き替え工事中で、白いカバーがかけられています。
三門を抜けて階段を上がると本堂です。木彫りの早太郎の像が鎮座しています。
社務所には、「早太郎ちりめん守り」、「不動明王梵字入り早太郎守り」、「早太郎ツゲ根付守り」など、様々な早太郎お守りがありましたが、今回は茶色い早太郎土鈴をいただきました。
本堂から左へ進んでいくと、早太郎の墓があります。団子状の丸い石が重なった墓で、手前に小さい犬像が置かれています。「霊犬早太郎六百年供養塔」と碑が立っています。
墓の周りには奉納されたたくさんの犬像があって、磐田市の「しっぺい」のメダルがかけてありました。「しっぺい」の里帰りですね。
高さ17mの三重塔の手前に2mほどの台座に乗った霊犬早太郎の像がありました。
寺を出て門前の土産物屋を覗いてみると、早太郎が描かれた参拝記念の土産の飴がありました。「護摩焚き祈願ごま」と書かれています。ゴマ味がおいしい飴です。
また近くには早太郎温泉があると分かったので、入ることにしました。いくつか温泉施設がありますが、その中で日帰り温泉「こまくさの湯」に行きました。遠くに南アルプスを望む露天風呂もあり、ゆったりと温泉を楽しむことができます。
早太郎は市のキャラクターになっているのでしょうか。
それを知るべく最後に市役所を訪ねました。
2003年に行われた「KOMA夏」というイベントをきっかけに生まれた駒ケ根市のキャラクター「ALL STARS」があり、そのメンバーの中に「SPEED太郎」と「ヒッヒー」というキャラクターがいます。
もちろん「SPEED太郎」は霊犬早太郎の生まれ変わりで、「ヒッヒー」は伝説の遠州見付村の怪物(老ヒヒ)がモデルです。
早太郎伝説については、市民はみんな知っている馴染みの物語で、たとえば、保育園では紙芝居で教えているとのこと。市民に愛されている早太郎なんですね。
昔は、見付村の人々を助け、現代では、駒ケ根市民を楽しませているようです。
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