【犬狼物語 其の九十六】 岐阜県恵那市 中山神社の「お犬さま」信仰
静岡県から岐阜県に抜けたところの旧串原村(恵那市)には、ちょっと変わった民間信仰があります。
舞台は、「お犬さま」信仰がある中山神社です。
ここは、数年前に紅葉の、ほぼ今と同じ時期に行っていますが、例大祭が10月に行われると聞いていたので、今年こそ行こうと思っていたら、同じ日に岩手県でのイベントの仕事が入ってしまい、また見逃してしまいました。
それでも、ここも【犬狼物語】からははずせないと思い、もう一度取り上げることにしました。
中山神社の何がそんなに面白いのかというと、造形的にも優れている独特の犬像があるからです。
それと秩父の「お犬さま」は紙に刷ったお札でしたが、中山神社では土焼き製の狛犬をお借りすることができるのです。ここの「お犬さま」はとくに、狐憑きを祓う効果があるという信仰があります。
今ではあまり聞かなくなりましたが、「狐に憑かれた」とか「狐憑き」とは、狐の霊に取り憑かれたと言われる人の精神の錯乱した状態で、今でいうと精神病の一種と考えられる症状です。
お祓いを受けて、狐の霊を追い出すことで治そうとした、ということです。その効果があると信じられたのが中山神社のお犬さまです。
10月の例大祭のときに、その狛犬を持参してお祓いをしてもらい、自宅に持ち帰って祀り、病気が治ればその狛犬を翌年神社に返します。ただその時は、倍の数を返すことになっているそうです。
昔からこの中山神社のお犬さまの効果は知られていたらしく、日本各地から、ここのお犬さまの狛犬が発見されているという。
神社の境内には、お犬さまを祭った祭壇が設けられています。髙さ5~10cmくらいのお犬さまがたくさん並んでいました。素朴な美しさがあります。これは病が治った信者が返した狛犬なのでしょうか。
生産された窯場も異なっていて、硬い陶質のものもありますが、一番多いのは瓦製で、黒灰色をしています。神社前の狛犬は2匹で1対ですが、このお犬さまは1匹単位で、阿吽の区別はありません。多くは口を閉じている吽形です。(「狐憑きを祓うおいぬ様信仰」より要約)
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