【犬狼物語 其の百七】 東京都文京区 東京大学農学部 忠犬ハチ公と上野英三郎博士像
東京都文京区にある、東京大学農学部のハチ公と上野英三郎博士像は、ハチ没後80年にあたる昨年2015年3月8日に除幕式が行われたものです。
イチョウが構内の通路に積もっていて黄色い世界ですが、門を入ったすぐのところにありました。
ハチ没後「ハチ十年」を記念して、この像が建てられることになり、ハチ公と上野博士の生き生きした結びつきを表現したいという希望を持って、彫刻家の植田努氏に製作が依頼されました。
忠犬ハチ公は世界的に有名でも、上野博士が東京帝国大学(東京大学)で教えていたということは、知らない人もいるかもしれません。
上野英三郎博士は、明治4(1872)年、現津市元町に生まれた農学博士です。明治から大正期に日本農業の基盤となる水田の耕地整理を指導し、大学はもとより全国各地で数多くの技術者を育成した農業土木分野の先駆け者でした。
東京帝国大学で教鞭をとった博士は54歳の若さで亡くなりました。博士の飼い犬ハチとの生活は1年5か月と短い間でした。
博士の死後も、ハチは頻繁に渋谷駅まで通っていたことで有名になりましたが、戦前は軍国主義の流れから「主人の恩に報いるために忠義を尽くして待ち続けた犬」と語られましたが、現代の解釈は少し違うかもしれません。
むしろ、ハチは「上野博士に会いたい」という純粋な気持ちで渋谷駅に通っていた、という点でしょう、注目するのは。その純粋な気持ちを持ち続けるハチ公の物語に、80年以上たった現代人も心を動かされるのです。忠犬ハチ公の現代における物語の価値はそこにあります。
逆にいえば、人間はそれだけ純粋な気持ちを持ち続けることが難しいということの裏返しでもあります。それは犬だからできることであって、だから犬を見ると「人はより人らしくなれる」のです。
上野博士に飛びつくハチ公の姿に純粋さがみごとに表現されているのではないでしょうか。
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