【犬狼物語 其の百四】 神奈川県熱海市 オールコックの愛犬トビーの碑
熱海市の、大湯間欠泉跡に建つオールコック(イギリスの初代駐日総領事)の愛犬「トビー」の碑を訪ねました。
オールコックは、安政6年(1859)、軍艦で長崎を経由で江戸湾に入り、日本に着任しました。
当初オールコックの日本に対する印象は悪かったようで、
「外来者たちを迫害することにかけては熱心な、奇怪でもあり野蛮でもある人種の住まう一群の島々」(『大君の郡』より)
と言っています。
オールコックは、スコッチテリアのトビーという名の愛犬を連れてやってきました。世界の果てに来たと思っていたオールコックを慰めてくれるのがトビーの存在でした。
オールコックの、日本人に対する評価が変わったのは、熱海での事故がきっかけだったようです。
外国人としては初めて富士山登山をしたオールコックは、帰途熱海に立ち寄りました。熱海滞在10日目、トビーが熱湯を浴びて死んでしまうのです。
宿泊先の本陣の庭にトビーの亡骸を埋めさせてほしいというと、日本人たちは同族の者が死んだかのように集まってきて、僧侶が水と線香を持ってきて、墓石が建てられました。
あとで碑を建てたいというと本陣の主人は快諾してくれました。
高さ70cmほどの「Poor Toby(薄幸なトビー),23 Sept.1860」と、富士山登山と熱海訪問の、2つの碑が、トビーの墓の脇に建てられました。
このようにトビーの死をきっかけにして、親切にしてくれた熱海の人たちに接して、オールコックは日本人に好意を持つようになりました。
その後、地震などで墓は行方不明になりましたが、ふたつの碑は残っています。間欠泉も大正時代からお湯を噴出しなくなりましたが、ふたつの碑は時々上がってくる蒸気を浴びています。
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