【犬狼物語 其の百四十九】 静岡県浜松市 春埜山大光寺のお犬さま
山住神社から春埜山大光寺を目指しました。
ナビに従ったら、最後、とんでもない山道を通ることになってしまいました。春野町花島という集落から林道を示していたので(確かに距離的には近い)、そこを進んだのですが、途中から狭いダートになりました。何度か切り返しをしなければならないほどの狭くて急なカーブも。坂にスリップしてタイヤのゴムが焼ける匂いがします。
もっと先の大時という集落まで行けば、舗装道路があったことはあとでわかりました。通るなら絶対こちらです。
ようやくダートを抜け、寺の前を通っている舗装道路に出たときはホッとしました。事故起こさなくて良かった~。鳥居が見えたので、駐車場もすぐわかりました。
大光寺は標高883mの春埜山頂上近くに位置し、「お犬様」と呼ばれ親しまれています。大変な思いをしてたどり着いたせいか、特別な感覚が沸き起こります。
それは、大げさに言えば、「桃源郷」と同じプロセスを経験したからでしょう。桃源郷も、狭い洞窟を通ったり、飛行機が墜落したりと、死ぬような思いをしてたどり着くものだからです。「死と再生の儀式」とでもいえるような体験をしたからこそ、たどり着いた先は、桃源郷となりえるのです。
昔の人に「ありがたさ」はもっと大きかったはずです。今のように車で来ることはできず、深い森の中を延々と上らなくてはならなかったわけだし。本当の狼も出たかもしれません。本物の狼ではなくても、森の「お犬さま」の気配は感じていたのではなかったでしょうか。
ここは神仏習合を貫き通したらしく、神社の機能も兼ねた寺です。そのためなのか、御真殿のたたずまいも独特なものを感じます。
御真殿の左右にはお犬さま(狼)像が鎮座しています。その姿は、かなり細身が特徴的です。野生の緊張感を表現しているような狼らしい姿をしています。それでいて、体の曲線には優しさも感じられます。山や自然に対する「畏怖」と「感謝」、お犬さまの持つ両面の表現形ということなのでしょう。
またここには縄文杉を思わせる巨木「春埜杉(はるのすぎ)」があります。
春埜杉は、行基菩薩が、春埜山大光寺の開山の際に植えられたものと伝えられています。樹齢:推定1300年。樹高:43mとのこと。県の天然記念物に指定されています。
ここでもお犬さまのお札を出していますが、ちょうど誰もいなくて、お札をいただくことはできませんでした。それで庫裏のガラス窓越しに見えたお札の写真だけ撮らせてもらいました。お札をいただくときは、前もって連絡してから参拝した方がいいようです。
ところで、ここのお札に刷られたお犬さまは、まだら模様の姿ですが、これは「狼」ではなくて、「山犬」と呼ばれた「野犬」であったようです。(狼も野犬も「山犬」と呼ばれたので、お犬さまの姿にも混乱が起きていたようです)
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