【犬狼物語 其の百八十一】 埼玉県坂戸市 狼民話の「恩がえし公園」
北大塚という地域に伝わる民話をテーマにした公園です。ネットで検索して知った狼ゆかりの場所です。
坂戸市では有名な狼の民話なのかどうか、それと、他にモニュメントなどあるのかどうか知りたくて、市役所に確認してみました。
坂戸市の住民にとっても、広く知られた民話ではなく、かなり地域限定の民話だそうです。地域に密着した公園ということで、この民話を参考に、トイレやベンチに狼の意匠を施したということだそうです。
公園に設置されている解説プレートからこの民話を要約すると、
「昔は、この辺りにもたくさんの狼がいた。その中にどん吉といういつもお腹をすかした、のろまな狼がいた。ある日、どんぐりの木に隠れて獲物をねらっているとおばあさんがやってきた。狼はおばあさんを食べずに、家まで送っていった。おばあさんは、そのお礼として魚をお供えした。狼たちは喜んで魚を食べた。どん吉はあまり急いで食べたので、骨を喉につまらせた。そこへ酔った大工さんが通りかかり骨を取ってくれた。大工さんはそこで寝てしまった。夜中、目を覚ますと周りには狼がいっぱい。食べられると思った大工さんは「わしは、一日にどんぐり5個しか食っとらんからまずいぞ」 すると狼は「さっきはありがとう。忘れた道具箱を届けにきました」 それから毎朝大工さんの家の前には、どんぐり5個がおいてあったとさ」
狼の恩返しの民話です。これは前に訪ねた東大和市の「藤兵衛さんと狼」と似ています。「喉につかえた骨を取ってもらって、狼が恩返しをする」という民話の1パターンのようです。
「藤兵衛さんと狼」でも書きましたが、忘れないようにもう一度書いておきます。
狼の恩返しの物語で、日本最初のものは、平岩米吉著『狼 その生態と歴史』によると、『日本書紀欽明天皇紀』の「秦大津父(はたのおおつち)」の話にまでさかのぼるそうです。
要約すると、
商人であった秦大津父は、山道で、二頭の狼が血を出して争っているのを止めました。「汝は、これ貴き神」と呼びかけ、もし猟師に見つかったら捕らえられてしまうからと、咬み合うのを止め、血に濡れた毛を洗いぬぐって、両方とも無事に放してやりました。
その後、天皇が不思議な夢を見て、秦大津父を探し出し、大蔵省(おおくらのつかさ)に任じました。
と、いった話です。
この話を平岩は、「これは、狼に対する信仰の物語であると同時に、いわゆる狼の恩返しの物語の最初のものである。」と書いています。
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