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2017/11/10

カズオ・イシグロ著 『日の名残り』を読んで

171110(ヨーロッパのイメージ写真。小説とは関係ありません)


日系イギリス人のカズオ・イシグロ氏がノーベル文学賞を取ったというニュースで、初めてイシグロ氏の名前を知りました。

それで代表作である『日の名残り』(土屋政雄訳 早川書房)を読んでみました。『日の名残り』(The Remains of the Day)は、1989年刊行された小説で、イギリス最高の文学賞ブッカー賞を受賞しました。

難しくて、途中で挫折してしまうかなと思ったら、意外に読みやすく、面白い小説だなと思いました。

ざっと言うと、真面目で優秀な執事の主人公が、新しいアメリカ人の雇い主に勧められて旅をして、最後は自分の人生を振り返るというストーリーです。

この小説はアンソニー・ホプキンス主演で映画にもなっているそうで、そのうち観てみたいと思います。

それで、小説を読み終えて、ある映画を思い出しました。

それは、 『鑑定士と顔のない依頼人』 という映画です。

優秀な美術鑑定士が、美術品については完璧に真贋を見抜くのに、周りにいた人間は、鑑定できなかった(彼らの真の姿を見抜けなかった)という皮肉な結末の映画です。友人と女性にすっかり騙されてしまうのです。

「本物」を「良し」とする鑑定士(権威者)というものが、常識の枠から抜け出せなくなる人間の心理を象徴しているのかもしれません。

『日の名残り』の主人公 執事スティーブンスの場合も、イギリス伝統の「執事」という職業においては、真面目で優秀であるがゆえに、女中頭のミス・ケントンのスティーブンスに対する恋心を理解できなかったり、仕えていた主人がユダヤ人を解雇することにも疑問を持たなかったり・ ・ ・。

いや、恋心をわからなかったわけではなく、「執事はこうあるべき」という枠から抜け出せずに、自分の恋心を押さえてしまったと言うべきでしょうか。このあたりは特になのですが、スティーブンスの語り口が全般的に真面目過ぎて、ユーモアを感じさせる部分でもあります。

最後は桟橋で、イギリスの伝統や、不遇な最期をとげた前の主人、自分の執事人生を振り返り涙するのですが、ただ、主人公は前向きです。

新しい雇い主のアメリカ人の主人に、ジョークを言って笑わそうと計画するのでした。ジョークを言う練習をし、技術を磨くという姿勢が、また真面目なスティーブンスらしいなと思います。
 
 
 
 
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